子宮頸がん(HPV)ワクチン

子宮頸がん(HPV)ワクチン

 近年、がんの予防や治療方法が進歩し、多くの人々の命を救ってきました。その中でも、キャッチアップ接種も始まり接種の再開となった子宮頸がんワクチンは大きな変換期を迎えています。子宮頸がん(ヒトパピローマウィルス Human Papillomavirus: HPV)ワクチンは、女性の健康を守るために開発されたワクチンであり、未来の子宮頸がん患者を減らす重要な役割を果たしています。本稿では、子宮頸がんワクチンの効果や副作用、接種のタイミングなどについて詳しく説明していきます。

子宮頸がんについて

そもそも子宮頸がんってなに?

 子宮頸がんは、女性の生殖器官である子宮の入口部分である頸部(子宮口)と呼ばれるところ発生するがんのことです。子宮頸がんは、他のがんに比べて若い女性に多く見られるという特徴があります。そのためより一層がんの早期発見や予防が重要とされ、子宮頸がんワクチンが注目されています。


子宮頸がんの原因

 子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。ヒトパピローマウィルスはごくありふれたウイルスの一つです。HPVの多くは性行為を通じて感染し、HPVの感染は女性の子宮頸部において異常な細胞の成長を引き起こす可能性をもたらします。その他のリスク要因として、喫煙、免疫機能の低下も関与するとされています。

子宮頸がんの多くの原因ヒトパピローマウイルス(HPV)について

 ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus、HPV)には、100以上の異なるタイプがあります番号がつけられています。その中でも主にHPV16とHPV18が子宮頸がんの発生リスクをを強く高めるとされています。HPVは膣粘膜における皮膚や粘膜より感染し、生殖器部位や口腔内に病変を引き起こすことがあります。

子宮頸がん(HPV)ワクチンについて

子宮頸がん(HPV)ワクチンの種類

  • 2価ワクチン(サーバリックス):HPVの中でも最も子宮頸がんの原因として多いとされるHPV16型と18型に対応するワクチンです。
  • 4価ワクチン(ガーダシル):上記に加え高リスクHPV16、18、6、11型に対応するワクチンです。HPV6および11は性器もしくは呼吸器コンジローマ(性器イボとして知られる)や喉頭ポリープの主な原因です。
  • 9価ワクチン(シルガード9):さらに近年では9種類の高リスクHPV(16、18、31、33、45、52、58型)に対応するワクチンが新しく開発されました。ガーダシルよりもさらに広範なHPV型に対応しており、子宮頸がんの予防効果が高いとされています。

 どちらのワクチンも、女性の子宮頸部でのHPV感染および子宮頸がんの発症リスクを減らすために使用されます。ワクチンの商品は地域や国によって異なる場合があります。ワクチンの詳細については、医師と相談することをお勧めします。

子宮頸がん(HPV)ワクチンの接種方法

 HPVワクチンの接種方法は、筋肉内注射で行われます。体の上腕部の筋肉に注射針を刺し、ワクチンを注入します。医師や看護師が接種を行い、注意事項や副作用についての説明を受けます。接種後は一定の時間観察を行い問題なければ帰宅できます。

子宮頸がん(HPV)ワクチンの接種スケジュール

 通常は3回の接種が必要です。接種間隔はワクチンの種類によって異なりますが、通常は最初の接種から1〜2ヶ月後に2回目の接種を行い、その後1回目から6ヶ月後程度を目安に最終回の接種を行います。3回接種することで十分な予防効果が得られるため、3回目まできちんと接種しましょう。
 ※合計2回の接種で完了できる方は、1回目の接種を小学校6年生の年度から15歳の誕生日の前日までに受け、その後、5か月以上あけて2回目の接種を受けた方となります。詳しくは医師に確認しましょう。

子宮頸がん(HPV)ワクチンの接種に最適な時期

 HPVワクチンの接種に最適な時期は、年齢によって異なります。積極的勧奨とされる時期は小学校6年生から15歳未満の子供に2回のワクチン接種が推奨されています。最初の接種から2〜6か月後に2回目の接種を行います。15歳以上の人は、3回で完結するようワクチン接種が推奨されます。最初の接種から1〜2カ月後に2回目の接種を行い、さらに4〜6カ月後に3回目の接種を行います。また、HPVワクチンは性行為を開始する前に接種することが望ましいとされています。

子宮頸がん(HPV)ワクチンの効果と安全性

子宮頸がん(HPV)ワクチンの効果

 HPVワクチンは、主要なHPVタイプ(16, 18, 31, 33, 45など)に対して高い効果を示し、これらのタイプが原因となる子宮頸がんや他のがんの発症を防ぐことができます。
 特に子宮頸がんの50〜70%はHPV16もしくは18型が関与されていることが知られています。そのため子宮頸がんに対して大きな効果が期待されます。9価ワクチンであるシルガードでは適切な時期に接種した場合、子宮頸がんの原因となるHPV感染を88.2%防ぐことができます
 HPVに対する感染は子宮頸がんの主要な原因のひとつでありますが、ワクチンはHPVに対する感染やその他のがん発症を予防する効果があります。具体的には陰茎がん、膣がん、外陰がん、肛門がんなどの予防に効果を持つとされています。これらのがんもHPV感染に関連しているため、ワクチン接種でそのリスクを低減することができます。
 ただし、HPVワクチンは必ずしも100%の効果を持つわけではありません。予防効果は高いですが、定期検査など他の予防策と組み合わせて行うことが重要です。


子宮頸がん(HPV)検査の安全性

 HPVワクチンは一般的に安全であり、数十年にわたる研究に基づいて開発されました。ワクチン接種による一般的な副作用は通常軽度で一時的なものです。主な副作用には注射部位の痛みや腫れ、頭痛、発熱などがあります。非常にまれですが、アレルギー反応やショック状態が起こることもあります。
ただし、ある種の特定の状態や過敏性反応のある人には、ワクチン接種が推奨されないことがあります。それにはアレルギー反応を起こしたことがある場合や、妊娠中の場合が含まれます。
ワクチンの安全性については、国際的な厳格な安全性モニタリングシステムが確立されており、ワクチンの副作用を効果的に監視しています。

子宮頸がん(HPV)ワクチン接種後について

子宮頸がん(HPV)ワクチン接種後の注意点

接種後の注意点は

  • 接種後のめまいやふらつきが見られる場合があるので、一定時間病院内で観察が必要です。
  • 接種後24時間以内の運動は控えましょう。
  • 接種した部位は強くこすらないようにしましょう。
  • できる限り前回の同じワクチンを受けるようにしましょう。

子宮頸がん(HPV)ワクチン接種後の副反応について

  • 注射部位の痛み・腫れ・かゆみ・しこり・内出血
  • 発熱
  • 頭痛・吐き気
  • 手足の痛み
  • 腹痛や下痢
  • 筋肉痛
  • だるさや疲れ

 子宮頸がん(HPV)ワクチンは他のワクチンの接種と同様に体の中でウイルス感染を防御する仕組みが働くため、私たちの身体に副反応として症状が現れることがあります。ほとんどは数日以内に治ります。時間を置いても改善しない場合は医師に相談しましょう。

まとめ

 今回は子宮頸がん(HPV)ワクチンに関して説明しました。子宮頸がんはワクチンだけで予防はできません。子宮頸がん予防のためにはワクチンと定期的な子宮頸がん検査を受けるようにしましょう。当院でも子宮頸がん(HPV)ワクチン及び子宮頸がん検査を承っています。ご興味のある方はぜひお声かけください。

戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

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この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 日本医科大学付属病院 初期研修
  • 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
  • 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
  • 複数企業にて嘱託産業医

学会・資格

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
  • 日本思春期学会 認定性教育講師
  • 日本生殖医学会会員
  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 日本女性心身医学会 会員
  • 日本医師会認定産業医

メッセージ

私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3丁目1−2 地下1階
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 都営浅草線 戸越駅徒歩1分
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時間/曜日
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17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
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