子宮頸がん検診:「ASC-US」と判定された方へ 

子宮頸がん検診:「ASC-US」と判定された方へ 

子宮頸がん結果「ASC-US」判定が出た方に知っておいてほしいこと

ASC-USとは、{Atypical Squamous Cells of Undetermined Significance」の略で、日本語では「意義不明な異型扁平上皮細胞」と訳されます。”アスカス”と読みます。


  • ASC-USはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染しているかもしれないという状態

子宮頸がん検診にて採取した細胞の中に、わずかに細胞の形(異型細胞)が通常と異なりHPV感染を疑う必要のある状態です。HPVは9割以上の子宮頸がんにおいて原因となっているウイルスです。

  • 「意義不明」の意味は?

この異型細胞が、がんの前段階である「異形成」によるものなのか、それともHPVの感染や炎症によるホルモンの一時的な変化なのかを、この検査だけでは判断できないことを意味します。

  • ASC-USの結果で重要な点は?

ASC-USの多くは、時間の経過とともに自然に治癒します。がんへ急に進行するリスクは低いですが、長い期間HPVの感染がある状況は異形成(前がん病変)に進展するリスクを高めます。そのためASC-USの結果となった場合はHPV検査が必要となります。



ASC-USと判定された場合の対応・フォローアップ

「ASC-US」の場合は精密検査が必要になり、①~③の方法が選べます。

ただちにハイリスクHPV検査を行う陰性:1年後に細胞診検査
陽性:コルポスコピー、生検
HPV検査を行わず、6か月目と12カ月目に細胞診再検査どちらか一方でもASC-USのとき、
コルポスコピー・生検を実施
HPV検査を行わず、ただちにコルポスコピー・生検されることも容認される

日本産科婦人科学会のガイドラインでは、が第一にすすめられています。

理由は…
子宮頸癌の9割以上がHPV感染により引き起こされる細胞変化が原因となるからです。そのためHPVの感染があるかどうかを調べる①が重要視されています。また、「ハイリスクHPV検査」にはほかにも様々なメリットがあります。

  • 保険で「ハイリスクHPV検査」が受けられる

「ASC-US」の結果が出た場合に限り、保険が適用されます。
(それ以外の結果が出た方や、子宮頸がん検診(細胞診)と同時に行う場合には自費になります。)

  • よりリスクの高いHPV感染が分かる

HPVは子宮頸がんの原因となるウイルスです。その中でも格段にリスクの高い、HPV16型と18型に感染しているかがわかる「簡易ジェノタイプ検査」が可能です。

  • 不要な検査・見落としが防げる

HPV検査で「陰性」であれば、1~2年後の再検査で済み、「陽性」ならば、次の精密検査としてコルポスコピー生検を行います。


ハイリスクHPVの中でも「がん」に進展しやすいHPVがあります

子宮頸癌に関係するハイリスク型HPVは14種類もあります。その中でも、HPV16型、18型は子宮頸がんに進展する可能性が高いことがわかっています。
HPV検査が「陰性」の場合、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVに感染していないことを意味します。ASC-USとなった原因は一時的な炎症などである可能性が高く、病変が進行するリスクは低いと判断します。

HPVによる持続感染がリスクHPV16型と18型が陽性のがん発症率

  • HPV16型に感染した方ががんへ進展する場合:10年間で17.2%
  • HPV18型に感染した方ががんへ進展する場合:10年間で13.6%
  • その他ハイリスク型HPV陽性:約3%
  • ハイリスク型HPVに感染していない方ががんへ進展する場合:10年間でほぼ0%

過度な不安は不要、大切なのはフォローアップすぐにがん細胞になるわけではない

子宮頸がん検診で「ASC-US」という結果が出ても、過度に不安になる必要はありません。

  1. これは「がん」ではありません
  2. 多くの場合、自然に治癒します
  3. 大切なのは、医師の指示通りの検査とフォローアップを必ず受けることです

精密検査が必要になったとしても、それは病変を早期に発見し、早期に治療し、病気からご自身を守る大切なプロセスです。放っておくことが最大のリスクとなります。健康診断や検査で異常を「ASC-US」の結果が出た場合は必ず産婦人科医を受診しましょう。

最終更新:2025/12/11


戸越銀座レディースクリニック診療案内

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この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 日本医科大学付属病院 初期研修
  • 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
  • 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
  • 複数企業にて嘱託産業医

学会・資格

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
  • 日本思春期学会 認定性教育講師
  • 日本生殖医学会会員
  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 日本女性心身医学会 会員
  • 日本医師会認定産業医

メッセージ

私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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