産後シリーズ②産後の心の回復

産後シリーズ②産後の心の回復

 本日は助産師のコラムです。産後の回復シリーズ②心の変化についてお伝えしていきます。
 女性にとって妊娠、出産は喜ばしいものであるとされていますが、実際には妊娠期、出産期、産褥期を通して心身への負担や今後の生活の変化への不安もあり、マタニティブルーズや産後うつ病になる方もいらっしゃいます。本日は産後の心の変化と起こりやすい症状、つらいときの対処についてお話していきます。

ホルモンの急激な変化で起こりますマタニティブルーズ

4人に1人!?マタニティブルーズとは?

 定義としては、分娩直後から産後7~10日以内に見られる一過性の情緒不安定な状態をいいます。症状のピークは産後3~5日で、特に治療の必要はなく、数日から2週間程度で自然に回復すると言われています。一番の原因は産後のホルモンバランスの急激な変化です。他にも初めての出産であること、過去に産後うつ病に罹患していること、月経前症候群(PMS)があった方、疲労や睡眠不測の蓄積、体調不良など様々な要因があります。
 日本では25%前後の褥婦さんが発症し、マタニティブルーズは産後うつのリスクが高まると言われています。


マタニティブルーズの症状

 気分が沈み、急に涙がでたり涙もろくなったりします。また不安や焦燥感、絶望感を感じる方もいます。集中力が低下する、よく眠れなくなる、頭痛や食欲不振となる方もいます。

マタニティブルーズの予防方法と対処法

予防方法

 妊娠中からマタニティブルーズがどういうものか知っておくと、ご自身に症状が現れた時に受け入れやすくなります。
また、妊娠中から不安が強かった方、PMSがあった方は、産後マタニティブルーズになったときに相談できる相手を作っておくのも良いでしょう。家族や知人以外にも、当院助産師や地域の保健師、ママサークル等相談できる場はたくさんあります。

対処法

 実際にマタニティブルーズになったときには、まずは信頼できる人に気持ちを話しましょう。そして、ゆっくり休める環境に身を置くことをお勧めします。ご家族に手伝ってもらうことや、産後ケア(訪問、日帰り、宿泊など様々あります)、ベビーシッターやファミリーサポートを利用してみるのも良いかもしれません
 体と心は密接しています。体の調子が整わないと心の調子を崩してしますことがあります。
産後シリーズ①のコラムでもお伝えしましたが、産褥期はしっかり休息し、体の回復に努めましょう。
 産後シリーズ①のコラムはこちらからもご覧になれます。

産後シリーズ①助産師コラム

マタニティブルーズこんな時は受診しましょう

 症状が2週間以上続き軽快しない時、症状がどんどん悪化する時、一度収まった症状が再発した時、下記にある産後うつ病の症状が現れた時には受診が必要です。
 マタニティブルーズは一過性の症状であるとはいえ、実際になると気分が強く落ち込みます。家族や友人に話してもつらい時や不安な時、生活に支障をきたしてしまう時には出産した産院に相談してみるか、当院助産師外来、育児相談の中でお話を伺えますので、いつでもご相談ください。
 産後は時に孤独感を感じることもありますが、味方はたくさんいます。一人で抱え込まず、ご相談くださいね。

10人に1人がかかるんです産後うつ

知っていますか?産後うつとは

 産後うつ病は10%程度の罹患率があり、2週間以上下記の症状が続きます。産後3か月以内に発症することが多いですが、産後半年で発症する方もいます。マタニティブルーズになった方やうつ病の既往がある方はリスクがあり、サポート不足などの環境要因も大きいと言われています。

産後うつの症状

・気分が落ち込み、意欲がわかなくなる
・人に合うのがおっくう
・笑顔が減り、口数が減る
・理由もなく涙が出てしまう
・家事や育児が出来ない
・不眠、または過眠
・食欲がなくなる、または過食してしまう
・子供をかわいいと思えない
・集中力がなくなり疲れやすい
・自分の外見やみだしなみにかまわなくなる
・過剰な心配がある
・自分や子供を傷つけたくなる
上記のような症状が現れ、2週間以上持続します。

産後うつの予防方法と対処法

予防法

 「自分は絶対に産後うつにならない!」と思っていた方でも発症するのが産後うつです。マタニティブルーズの予防・対処にも記載していますが、まずは産後うつについて知っておくことが大切です。その上で妊娠中から相談できる相手を作っておくこと、特にパートナーやご家族ともマタニティブルーズや産後うつについて共有しておくことも必要です。

対処法

 実際に産後うつと診断された場合は適切な治療が必要です。その場合は精神科・診療内科を受診し、まずはしっかり休息をとること、環境を調整することが必要です。そして症状に応じて抗うつ薬の内服や睡眠や不安を抑えるのを助ける薬が処方されることがあります。心理療法の治療も行います。放っておいて治る症状ではありませんので、我慢せずに受診をしましょう。精神科・心療内科への受診になかなか気が進まない場合は、分娩した産院や産婦人科へいったんかかり、紹介状をかいてもらうという方法もあります。


産後うつこんな時は受診しましょう

 上記症状が2週間以上続く場合は我慢せずに受診しましょう。精神科・心療内科に受診することが望ましいですが、受診のハードルが高いときはまず保健センターに連絡する(担当の保健師がお話を伺います)、出産された産院や当院の育児相談外来等を受診していただいても大丈夫です。
 産後うつを発症する方の中には「自分だけ頑張れていないんじゃないか」「ほかの人は出来ているのに」と自分を責めてしまう方もいらっしゃいますが、決してそうではありません。妊娠、出産、産後の激動の時期を乗り越え、ホルモンの激しい変化によって引き起こされる症状です。すでに十分すぎるほど頑張っています。ですから、自分を責めずに適切な治療を受けられるよう、受診してくださいね。

できることから家族のサポート

 では、ママがマタニティブルーズや産後うつになったときに、パートナーやご家族はどのようなサポートを行ったらよいでしょうか。
まずは、ママがしっかり休めるよう、家族みんなで家事や育児のサポートを行いましょう。また、ママのつらいという感情を受け止め、物事の強要をしないことも大切です。ママ自身が気づかず、周りのご家族が見て「いつもと違うな、おかしいな」と思った時には精神科・心療内科への受診を促し、付き添ってあげてください。
 しかし、慣れない赤ちゃんとの生活の中、マタニティブルーズや産後うつを発症したママを支えるご家族も気持ちが落ち込むこともあります。ご家族がリフレッシュする時間もしっかりと確保し、ご家族自身が辛いときやうつ症状がある時は我慢せずに周りの方や行政に相談し、精神科・心療内科を受診することが必要です。

たくさんあります心が辛いときの相談場所について


・出産した産院
心がつらい時の相談が可能かは病院によるため、電話で問い合わせてみましょう。
・精神科 心療内科
精神科は心の不調がある心の病気を専門とし、心療内科は様々なストレスや心の不調が原因で身体に不調をきたした方の治療を専門としています。どちらに受診したらよいか迷うときは診療科目に精神科・心療内科どちらもある病院に受診するか、お近くの病院に一度電話で問い合わせてみましょう。
・保健センター
各自治体にあり、住所によって管轄の保健センターがあります。「お住いの住所 保健センター」で検索するとわかります。保健師より必要なサポートを教えてもらえます。
・産後ケア施設
お住いの自治体によっては助成があります。休息のために利用しましょう。
・オンライン助産師相談
東京都で行っている相談窓口です。妊婦さん、産後1年未満の褥婦さんを対象にしています。英語での相談も可能です。
・当院でもご相談可能です
マタニティブルーズでつらいとき、産後うつかもしれないけど、受診していいかわからない・・・そんな時は当院でも助産師外来、育児相談でお話を伺い、必要時は医師より精神科受診のご案内をさせていただきます。お気軽にお越しください。

心の回復についてまとめ

 本日は心の回復についてのお話をしました。体と心は密接です。健やかな産後を過ごせるよう、妊娠中から家族で準備ができるとよいですね。産後、今現在つらい方がいらっしゃいましたらいつでもご相談ください。
 産後シリーズ③では赤ちゃんと過ごすスケジュールについてお伝えします!

戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

この産婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 助産師玉置 愛加

経歴

  • 東京都立大学健康福祉学部看護学科、助産学専攻科卒業
  • 都内地域周産期センター産科・NICU勤務

資格

  • 看護師
  • 助産師

メッセージ

 私は助産学専攻科を卒業後、地域周産期センターにて妊婦さんや産婦さん、お母さんと赤ちゃんのケアに携わってまいりました。
また、NICU・GCU病棟での経験もあり、小さく生まれた赤ちゃんや疾患を抱える赤ちゃんのケアも行ってきました。
前職場の助産師外来では妊婦健診を担当し、産後健診ではお母さんのお話をたくさん聞かせていただきました。その経験を当クリニックの助産師外来でも生かせるよう、妊娠期やお産、産後を心も体も健やかに過ごせるよう、微力ながらサポートさせていただけたらと思います。
 また、婦人科においては、安心して診察を受けていただけるように診察のサポートを努めさせていただきます。
どのようなライフステージにおいても「しんどいな、大変だな」と感じるときには、言葉にするだけでも心が軽くなることがあります。クリニックでいつでもお待ちしておりますので、ぜひお声掛けください。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。

記事に関連する記事

月経(生理)移動の方法

 旅行や試験、スポーツの試合などのイベントと月経(生理)が重なってしまうと予定やパフォーマンスに影響することがあります。月経(生理)は医師の指導の下、正しい方法を使用することにより日程を移動し...

無痛分娩の病院を選ぶポイント

 本日は助産師のコラムです。以前のコラム、「出産(分娩)場所の選び方」でも触れていますが、今回は無痛分娩施設を探す際にチェックしたいポイントをより細かく挙げていきます。
一番大切なのは、ご自身が...

妊娠中の食事について

 今回は助産師コラムとなります。タイトルの通り、妊娠中の食事についてお話させていただきます。
妊娠すると、食べるのに注意が必要な食材や、積極的に取った方が良い食材があります。
また、妊娠中の体重増...