月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)

 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)は女性の生活におけるパフォーマンスに大きく影響します。女性のなかには月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)を知らず、がまんをしてやり過ごすこともあります。月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)を知ることにより治療ができること、治療介入することにより快適に自分らしく過ごせることをぜひ知っていただきたいです。

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)とは?

月経前症候群(PMS)とは?

 月経前症候群(premenstrual syndrome ; PMS)とは「月経開始の3~10日くらい前から始まる精神的・身体的症状であり、月経開始とともに減退ないし消失するもの」と定義されます。症状としてはイライラ・のぼせ・下腹部膨満感・下腹部痛・腰痛・頭痛・乳房痛・気分の落ち込みの順に多いとされます。日常生活に支障をきたすような身体症状または精神症状が少なくとも1つ、生理前に毎回あれば月経前症候群と診断されます。


月経前不快気分障害(PMDD)とは?

 月経前症候群(PMS)と似たような病気の名前として、月経前不快気分障害(PMDD)というものがあります。月経前不快症候群(premenstrual dysphoric disorder ; PMDD)は抑うつ気分などの精神症状を伴う最重症型の月経前症候群として位置付けられています。

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)の原因は?

 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)の原因ははっきりとはわかっていませんがいくつかの要因が関与している可能性が指摘されています。
  ①ホルモンバランスの変化
  ②セロトニンの低下
  ③精神的ストレス
  ④生活スタイルが可能性として挙げられています。これらの要因は個人によってどのように症状に影響するかはそれぞれ異なるかもしれません。

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)に対して自分でできることは?

 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)に対してセルフケアを行うことで、ある程度の症状軽減が期待されます。

・適切な栄養の摂取
 カルシウム・マグネシウム・ビタミンB6などが症状緩和に役立つとされています。バランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素を摂取するようにしましょう。
・適度な運動
 ウォーキング・ジョギング・サイクリングなどの軽度な有酸素運動やストレッチは血流を促進し、症状緩和が期待されます。同様に身体を温めることもおすすめです。
・ストレスの軽減
 ストレスは月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)の症状を悪化させる可能性があります。深呼吸や瞑想・ヨガなどリラックスできるような趣味の時間を設けるなどストレスを軽減する方法と取り入れるようにしましょう。
・十分な睡眠時間の確保
 十分な睡眠を確保することは気分を安定させ、疲労回復につながります。規則正しく、十分な睡眠を確保できる環境を心がけるようにしましょう。

 セルフケアを行なってもPMSの症状が悪化する場合は産婦人科医に相談し、適切な治療や管理方法を行うようにしましょう。


月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)にはどのような治療方法があるの?

①ピル

 ピルは一般的に月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)の症状を緩和するために使用されます。ピルに含まれる女性ホルモンは生理的なホルモンバランスを鎮める効果があります、ピルを使用することにより月経周期を安定させ、排卵を抑えることができます。
 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)の症状は女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの変化によって引き起こされると考えられています。そのためピルの作用の特徴を利用してこれらの症状を軽減することが期待できます。
 ただし、個人によって効果や副作用が異なります。そのためピルの使用を希望する場合は、医師と相談して適切なピルの種類を選択し、使用方法を確認する必要があります。

②漢方

 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)による症状は漢方により軽減されることが知られています。具体的に各症状に対してよく使用される漢方は以下になります。

  • めまい・冷え・肩こり: 桂枝茯苓丸(けいしぼくりょうがん)
  • 頭痛・むくみ:五苓散(ごれいさん)
  • 冷え・腹痛:当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
  • イライラ:抑肝散(よくかんさん)
  • 落ち込み:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  • イライラ+落ち込み:加味逍遙散(かみしょうようさん)

③抗うつ剤

 月経前症候群(PMS)の最重症型とされる月経前不快気分障害(PMDD)では抗うつ剤を使用することがあります。抗うつ剤の種類としては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)が使用されます。うつ病にも使用される薬となります。ただし月経前不快気分障害(PMDD)も産婦人科における治療で改善が見られない場合は重症になると精神科での治療が必要となります。

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)の診断方法は?

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)を疑うときのセルフチェック

 まずは生理の期間とともに、いつ症状があったのかを記録してみましょう。このような記録を症状日記と言います。具体的にどのような症状があったのか、症状のあった頻度、現れやすい時期を記録することによってパターンを把握することができます。また記録することにより日常生活においてどの程度影響しているか評価してみましょう。
 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)であった場合は、症状が生理後に消失します。症状が消失しない場合は他の病気が隠れていることもあります。症状日記を記録した上で専門の医師に相談することも診療する上でとても有効です。


月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)を疑うときに行う検査は?

 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)に対して確定診断をするのために必須の検査はありません。ただし生理とは関係なく、他の内科疾患・精神科疾患による体調不良であることがあります。そのため症状日記や問診のほかに医師の判断のもとで必要に応じて、身体検査や心理検査が行われることがあります。

月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)まとめ

 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)では気づかないうちに日常生活に影響を与えていることがあります。今までよりもなんだか毎月しんどいな、つらいな、症状に変動があるなと感じた場合は、月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)を考慮し症状日記をつけてみましょう。
 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)が疑わしい場合は治療により、症状を改善し日常生活をより快適に過ごすことが期待できます。当院でも生理に関連したお悩みについて診療を行っております。気になる方は一度ご相談ください。

戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

婦人科

婦人科

 戸越銀座レディースクリニックは女性の様々な世代において起こりうる身体の変化・お困りごとに対して寄り添い、快適に過ごせるよう最適な診療を提供いたします。
婦人科の画像

オンライン診療

オンライン診療

 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
オンライン診療の画像

産科・妊婦健診

産科・妊婦健診

 当院には周産期施設にて勤務してきた女性医師・助産師が在籍しております。妊娠・出産前後に関するご相談をお受けします。妊娠を通して変化する心と身体に寄り添った診療を提供いたします。
産科・妊婦健診の画像

婦人科検診・ドック

婦人科検診・ドック

 戸越銀座レディースクリニックでは定期検査・婦人科検診を含めた婦人科診療に力を入れています。女性の一生に寄り添えるクリニックを目指します。
婦人科検診・ドックの画像

自費診療

自費診療

 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
自費診療の画像

この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 日本医科大学付属病院 初期研修
  • 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
  • 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
  • 複数企業にて嘱託産業医

学会・資格

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
  • 日本思春期学会 認定性教育講師
  • 日本生殖医学会会員
  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 日本女性心身医学会 会員
  • 日本医師会認定産業医

メッセージ

私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3丁目1−2 地下1階
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。

記事に関連する記事

妊娠中の旅行について

 妊娠中の旅行は、「マタ旅」と呼ばれたりします。(マタニティー旅行の略)診察室や保健相談の場でもよく「旅行に行っても大丈夫ですか?」と質問があります。
 今日は、「マタ旅」について、助産師の目...

妊娠中のインフルエンザワクチン

 インフルエンザの季節がそろそろ近づいており、接種を検討している方もいらっしゃるかと思います。本日は妊娠している時のインフルエンザワクチンをどう考えるかに焦点を当てています。妊娠中でありインフ...

妊娠糖尿病を診断する「75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)」

 妊婦健診中に行われる随時血糖測定は、妊娠糖尿病のスクリーニングとして行われることがあります。随時血糖測定は、食事の影響をある程度受けるものの、妊娠糖尿病のリスクが高い妊婦さんの初期発見や早期...