生理の痛みがつらいときは?

生理の痛みがつらいときは?

 生理の時の下腹痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、イライラするといった症状に悩まされる方は少なくないと思います。それらの、月経に随伴しておこる病的症状を月経困難症と言います。鎮痛剤を使用しないと生活に支障が出るような方は、産婦人科を受診しご相談されることをおすすめします。

生理のメカニズム、
生理痛の原因は?

生理はどうしておきる?

 思春期になると女性の身体は赤ちゃんを迎えるための準備が始まり、初経を迎えます。内分泌学的機能により視床下部、下垂体、卵巣が連動して、卵巣から女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)を放出し、エストロゲンの影響で子宮内膜を増殖させます。その後排卵が起きると、卵巣はもう一つの女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)を放出し、子宮内膜を厚くさせ、受精卵が着床するための準備を行います。受精卵が着床しないと子宮内膜は剥がれ落ち性器出血が起こり、次のサイクルに備えます。これが生理です。通常の月経周期は25〜38日とされますが、初経から数年は無排卵周期であることが多く周期にもばらつきがみられます。


生理痛の原因は?

 生理の時には、お腹や腰の痛み、お腹の張るような感じや吐き気、頭痛、疲れやすくいらいらしたりなどのメンタルの不調を自覚することがあり、これらの病的症状を月経困難症と言います。月経関連の症状で産婦人科を受診する方で、主な症状が月経痛であったものは4割程に及ぶとの報告もあります。月経痛のメカニズムとしては、子宮内膜から産生されるプロスタグランジンという物質が子宮を過度に収縮させたり、狭い子宮の入り口を経血が通ることによって痛みを感じるとされています。また、若い方では生理に対するネガティブなイメージや、痛みへの不安や恐怖といった心理的な要因もあると言われています。なかなか人に相談しにくいことかもしれませんが、学校や職場など社会生活に支障がでることもありますので、是非かかりつけの産婦人科をみつけることをおすすめします。

生理の痛みがつらいとき

 生理痛の程度を他の人と比べるのは難しいですがが、痛み止めの内服が必要なくらいつらい痛みが場合は産婦人科を受診されることをおすすめします。月経困難症は、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫や子宮奇形などの器質的疾患を伴う器質性月経困難症と、それらを伴わない機能性月経困難症に分けられます。器質性月経困難症の場合は、それぞれの疾患に対する治療により月経痛の改善や、将来の妊娠しやすさにつながります。機能性月経困難症の場合も、適切に治療することで生活の質の改善につながります。受診の際には経腟超音波での検査をすることが基本となりますが、性交渉未経験の場合には経直腸超音波や経腹超音波で代用することもできるため、是非産婦人科に相談してください。

器質性月経困難症って?
子宮内膜症や子宮筋腫がある場合

器質性月経困難症とは

 子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮奇形などの器質的疾患に伴うものを器質性月経困難症と言います。好発年齢は30歳以降で、初経後10〜20年の間にだんだんと月経痛が増強したり、月経前4〜5日から月経後まで続く持続性の鈍痛を自覚することが多いとされます。中でも重度の生理痛の原因として一番多いとされるのが、子宮内膜症です。以前は20歳以上に好発する疾患とされていましたが、骨盤痛を訴えた思春期女子の多くに子宮内膜症を認めたとの報告もあり、丁寧な診療による鑑別が必要とされます。長期に放置すると骨盤内の炎症や癒着により不妊の原因となりますので、鎮痛剤の内服が必要なほど痛みがある場合には、一度産婦人科で診察を受けることをおすすめします。


子宮内膜症について

 子宮内膜症とは、子宮内膜様の組織が、本来あるべき子宮の内側以外に発生してしまう疾患です。生理の際に子宮内膜は剥がれ落ち、経血として子宮から体外へ排出されますが、卵巣や骨盤内に発生すると体外へ排出されずに溜まってしまったり、周りの組織と癒着することで痛みを生じます。痛みは月経時だけでなく、腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などもみられます。また、癒着により不妊となることもあるため、生理痛が重い場合は放置せずに産婦人科で相談することをおすすめします。治療法は薬物療法と手術療法に分けられ、クリニックなどで行う薬物療法では非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP、低用量ピル)や黄体ホルモンなどのホルモン製剤が有効とされます。

子宮筋腫について

 子宮筋腫は子宮に発生する良性腫瘍で、婦人科腫瘍の中で最も頻度が高く、30歳以上の女性の20〜30%に認めるとされています。自覚症状が全くないこともありますが、筋腫の大きさや場所によっては過多月経、月経痛や下腹痛・腰痛、便秘や頻尿などの圧迫症状を認めたり、不妊や流早産のリスクを上昇させることがあります。無症状の場合には定期的な経過観察で急速に大きくならないかみていくことになりますが、有症状の場合は手術療法と保存的療法があり、年齢や症状の具合、妊娠希望かあるかどうかによって選択します。薬で根本的に子宮筋腫をなくすことはできませんが、一時的に小さくしたり、月経を起こさせないことで症状を緩和することができますので、是非ご相談ください。

機能性月経困難症って?

機能性月経困難症とは

 子宮内膜症や子宮筋腫などの器質的疾患を伴わない月経困難症を機能性月経困難症と言います。初経から2〜3年頃から始まり、痛みは月経の1〜2日目頃の出血が多いときに強いとされます。好発年齢は15〜25歳で若い方に多くみられます。
症状は4〜48時間続き、特徴的な症状は下腹痛や骨盤痛で、腰や脚に放散する痛みを伴うとされます。月経困難症を来す女性は、月経時に子宮内膜から産生されるプロスタグランジンが多いことが報告されており、プロスタグランジンが子宮を過度に収縮させることによって強い痛みを感じると言われています。また、初経が始まったばかりの子宮は未熟性から子宮内に月経血が貯まり、硬い子宮の入り口を通過する時の刺激で痛みを感じやすくなります。


診断のための問診や検査は?

 月経困難症を認める場合には、器質的疾患の鑑別のために内診や経腟超音波検査は有用な検査ですが、性交経験のない女性の場合は、必ず相談してから直腸診や経直腸超音波検査や経腹超音波検査などで代用しますのでご安心ください。
また、器質的疾患が疑われる場合には、状態によってMRI検査などもご案内します。問診では初経年齢や月経周期、月経痛の状態やその他の月経前後の症状、月経量や鎮痛剤内服の有無などをお聞きします。思春期前後の患者様で保護者の方と来られた場合は、性交渉歴などは個別にお聞きする場合があります。

機能性月経困難症の治療は?

 月経困難症の発生には月経時の内膜から産生されるプロスタグランジの影響が大きいため、プロスタグランジンの合成阻害薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択となります。痛みを我慢し過ぎるとすでにプロスタグランジンが産生され効果が出るまで時間がかかってしまうため、痛みを感じ始めたら早めに内服するようにしましょう。また、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP、低用量ピル)も有効であり、保険適用薬があります。副作用もあるため、かかりつけの産婦人科で検査や説明を受けてから内服を開始することをおすすめします。漢方薬や鎮痙薬も有効な場合があるため、NSAIDsが使用できなかったり、効果が不十分な場合には内服を検討しても良いでしょう。

生理の痛みがつらいときは?まとめ

 重い生理痛、月経困難症でお悩みの方は是非一度産婦人科を受診しましょう。不妊などにつながる疾患が見つかることもあります。初めて産婦人科を受診する方にもご安心していただけるよう、検査や診察は相談しながら行います。

診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

婦人科

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 戸越銀座レディースクリニックは女性の様々な世代において起こりうる身体の変化・お困りごとに対して寄り添い、快適に過ごせるよう最適な診療を提供いたします。
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オンライン診療

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 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
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産科・妊婦健診

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 当院には周産期施設にて勤務してきた女性医師・助産師が在籍しております。妊娠・出産前後に関するご相談をお受けします。妊娠を通して変化する心と身体に寄り添った診療を提供いたします。
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婦人科検診・ドック

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 戸越銀座レディースクリニックでは定期検査・婦人科検診を含めた婦人科診療に力を入れています。女性の一生に寄り添えるクリニックを目指します。
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自費診療

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 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
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この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 副院長・産婦人科専門医春名 百合愛(はるな ゆりあ)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 同大学女性診療科・産科入局後、大学病院・周産期センターにて勤務
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医

学会・資格

  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 新生児蘇生法専門コース修了
  • 日本女性医学会 会員
  • 日本生殖医学会 会員

メッセージ

 私は医学部時代に自身が産まれた周産期センターで臨床実習をした際に、生命の誕生の奥深さに感動し、産婦人科医を志しました。大学病院入局後は、産婦人科学全般を学んで専門医を取得し、希望であった周産期分野に従事してまいりました。女性にとって妊娠・出産は大きなライフイベントであり、喜びとともに不安も尽きないと思います。その前後も含めたすべてのライフステージにおける女性が自分らしく健やかに生きるサポートをいたします。産婦人科というとなかなか受診のハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思いますが、安心してご相談いただけるよう丁寧な診療を心がけますので、ぜひお気軽にお越しいただけましたら幸いです。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。

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