インフルエンザの季節がそろそろ近づいており、接種を検討している方もいらっしゃるかと思います。本日は妊娠している時のインフルエンザワクチンをどう考えるかに焦点を当てています。妊娠中でありインフルエンザワクチンを検討している方はご参照ください。
そもそもインフルエンザとは?
インフルエンザ(インフルエンザウイルス感染症)とは、インフルエンザウイルスが原因で引き起こされる急性の感染症です。主に冬季に流行し、人から人へ飛沫感染や接触感染を通じて広がります。風邪に似た症状を引き起こしますが、インフルエンザはより重い症状や合併症を引き起こす可能性があります。
インフルエンザ症状は?
- 38-34℃の高熱
- 筋肉痛・関節痛
- 倦怠感
- 頭痛
- 喉の痛み
- 咳・鼻水
- 子どもの場合は嘔吐や下痢
インフルエンザ感染経路
- 飛沫感染:咳やくしゃみによるウイルスが空気中を漂い、近くの人が吸い込むことで感染。
- 接触感染:ウイルスが付着した手で目や口、鼻を触れることで感染。
インフルエンザ予防方法
- ワクチン接種:流行前に予防接種を受けることで重症化を防ぐ。
- 手洗い:外出後や食事前にウイルスを洗い流す。
- マスク着用:飛沫感染のリスクを軽減。
- 室内換気:空気の流れを良くしてウイルス濃度を下げる。
インフルエンザ治療方法
症状が出たら医療機関を受診し、適切な処置と処方を受ける。抗インフルエンザウイルス薬(タミフル・リレンザなど)を内服する。
妊娠とインフルエンザ感染症
妊娠中のインフルエンザ症状への影響
妊娠中にインフルエンザに感染した場合、一般的な症状は非妊娠時と同じですが、妊娠中は免疫機能が変化するため、症状が重くなるリスクや合併症を起こす可能性が高まります。重症化した場合は上記の一般的な症状の他に呼吸困難や胸の痛みがあらわれることがあります。
妊娠中のインフルエンザ妊娠中にインフルエンザが重症化しやすい理由
妊娠中にインフルエンザが肺炎など症状を重症化させる明確な原因はわかっていませんが、以下の要因が考えられます。
- 免疫機能の変化:妊娠中は免疫反応が抑制され、感染症に対する抵抗力が低下する可能性があります。
- 心肺機能の変化:胎児の成長に伴う子宮の増大や、全身の循環血液量の増量が呼吸器や循環器への負担を増加させる可能性があります。
増悪因子妊娠中にインフルエンザが重症化しやすい条件
- 妊娠28週以降
- 喘息持ち
妊娠中のインフルエンザ胎児への影響
ほとんどの場合は母親がインフルエンザに感染しても胎盤を通してインフルエンザウイルスそのものが胎児に影響することはないとされています。
妊娠中のインフルエンザ治療
妊娠中でも使用できる抗インフルエンザ薬(タミフルなど)があります。発症後48時間以内に使用することで重症化を防ぐことができます。
知っておくべきこと妊娠中のインフルエンザワクチン
妊娠中はインフルエンザの重症化リスクが高いため感染を防ぐことがもっとも重要であり、世界保健機関(WHO)などの国際機関からも推奨されています。
- 妊娠中でも妊娠週数に関わらず、インフルエンザワクチンの接種は可能です。妊娠初期でのインフルエンザワクチン接種による流産・早産や胎児奇形の報告はいまのところない。
- インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、妊娠中でも安全性が確認されている。
- インフルエンザワクチン接種の効果は接種2週間後から5カ月間であり、胎児にも免疫力が備わることがわかっている。
*国内産のインフルエンザワクチンでは鶏卵が使用されていることがあります。卵アレルギーをお持ちの方は医師と相談した上で接種を検討しましょう。
妊娠中におけるインフルエンザワクチンと水銀
妊娠中のインフルエンザワクチン接種に関して、防腐剤として使用される水銀化合物の安全性がよく話題になります。ワクチンの防腐剤で使用される水銀はチメロサールであり、魚介類に含まれるメチル水銀とは異なるため体内に蓄積しにくく、比較的早く体外に排出されることが知られています。多くの研究で、チメロサールを含むワクチンが妊娠中の母体や胎児に悪影響を与える証拠は確認されていません。また含まれる水銀量は日本人が1日に接種する量の半分にも満たないとされています。そのためインフルエンザワクチンに含まれる水銀化合物は胎児への影響に懸念されるものではなく安全性に問題ないと結論づけることができます。
授乳中とインフルエンザ感染症
授乳中でも使用できる抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザ)は母乳への移行がごくわずかであり授乳の継続が可能とされています。インフルエンザにかかったときは赤ちゃんへの感染を考慮し、授乳を継続すると良いでしょう。
- 抗インフルエンザ薬を2日間以上内服している。
- 平熱になっている。
- 咳・鼻水がない。
まとめ
これからインフルエンザの本格的なシーズンを迎えるまえにインフルエンザワクチンの接種を検討している妊婦の方、ご家族の方は多くいらっしゃると思います。今回の記事を読んで、接種を検討いただけたらと思います。戸越銀座レディースクリニックでは妊娠されている方だけでなく、ご家族(子供は13歳以上)もインフルエンザワクチンの接種が可能です。ご希望のかたはお気軽にお申し付けください。
戸越銀座レディースクリニック診療案内
戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。
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この婦人科コラムを書いた人
戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)
経歴
- 日本医科大学医学部卒業
- 日本医科大学付属病院 初期研修
- 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
- 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
- 複数企業にて嘱託産業医
学会・資格
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
- 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
- 日本思春期学会 認定性教育講師
- 日本生殖医学会会員
- 日本周産期・新生児医学会 会員
- 日本女性心身医学会 会員
- 日本医師会認定産業医
メッセージ
私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。
戸越銀座レディースクリニックについて
品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。
〒142-0041
東京都品川区戸越3丁目1−2 地下1階
・アクセス
都営浅草線 戸越駅徒歩1分
東急池上線 戸越銀座駅徒歩4分
時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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9:15-13:00 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ★ | ★ |
14:00-17:30 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | × | × |
17:30-19:00 | × | ⚪︎ | × | ⚪︎ | × | × | × |
★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
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