出産(分娩)場所の選び方

出産(分娩)場所の選び方

 戸越銀座レディースクリニックに勤務している助産師です。
当院では、妊娠確認から妊娠32~34週ころまでの妊婦健診を行っておりますが、分娩設備はないため、ご自身・ご家族で分娩施設をご検討いただく必要があります。
 今回は、分娩施設を決定する参考になるよう、セミオープンシステム・里帰り出産についてご説明いたします。また、助産師の目線から分娩施設の検討ポイントについてお伝えします。

まずは、1 セミオープンシステム・里帰り出産

 はじめに、当院で妊婦健診を行い、分娩は当院と提携している病院で行う「セミオープンシステム」についてご紹介いたします。

耳にしたことあるかもしれませんが・・・① セミオープンシステムとは?

 セミオープンシステムとは、妊婦健診は自宅や職場近くの通院しやすいクリニックで行い、出産(妊娠9~10か月以降の健診から分娩、産後1カ月まで)は高度な設備を持つ病院で対応するシステムです。妊産婦さんの利便性を保ちながら、それぞれの医療機関のメリットを上手に活用した連携システムで「安全・安心」な出産を実現することが可能です。当院では対応することが難しい異常がある場合や、当院が休業している夜間・休日の緊急対応は分娩施設で迅速に対応する仕組みになっています。
※母体・胎児にリスクがある場合、お受けできないことや、途中で分娩施設での妊婦健診に切り替わることがあります。
当院が提携している病院は下記の通りです。


連携施設名住所無痛分娩 
昭和大学病院東京都品川区
旗の台1-5-8
東京品川病院東京都品川区
東大井6-3-22
厚生中央病院東京都目黒区
三田1-11-7
愛育病院東京都港区
芝浦1-16−10
日本赤十字医療センター東京都渋谷区
広尾4-1-22
東京かつしか赤十字母子医療センター東京都葛飾区
新宿3-7−1
△ 
経産婦のみ
慈恵会医科大学病院東京都港区
西新橋3-19−18
都立荏原病院東京都大田区
東雪谷4-5−10
△ 
経産婦のみ
日本医科大学
武蔵小杉病院
神奈川県川崎市
中原区小杉町1-383
NTT東日本関東病院東京都品川区
東五反田5-9-22
都立広尾病院東京都渋谷区
恵比寿2-34-10

 予約・受診方法などは各連携施設によって異なりますので、HPなどをご確認ください。

続いて、「里帰り出産」についてご紹介します。② 里帰り出産

 里帰り出産とは、妊婦さんがご実家などに帰省し、健診を受けていた施設以外の施設で出産することです。一般的な里帰りの時期(妊娠32週頃)までの妊婦健診を自宅や職場近くの施設で受け、里帰りの時期以降はご実家などの近くの病院で対応することになります。妊娠の確認を行い、赤ちゃんの心拍がしっかりと確認できたころ~予定日確定ころ(おおむね妊娠7~10週)あたりまでには出産施設を決定しておけると安心です。
 人気の高い病院などでは分娩制限を行っていることもあり、妊娠初期のうちから分娩予約を受け付けている病院もあります。希望者や分娩数が多い時期では希望の病院で分娩の予約が取れないこともありますので、注意しましょう。産後、料理や洗濯・掃除などの家事のサポートを家族から受けることができ、赤ちゃんのお世話に集中できることや、無理せずゆっくり過ごすことができるなどのメリットがあります。
※当院が休診となる、夜間・休日の緊急受診先(バックアップ施設)を決めておくと安心です。バックアップ施設や登録などについては、初期保健相談時に助産師からご説明いたします。
 

2 分娩施設の検討ポイント

 次に、どのように分娩施設を決めるのか、助産師の視点からご紹介します。
 ※医師の視点からの病院の選び方を過去にコラムで紹介しております。

ぜひこちらも合わせてご参照ください。

希望の出産スタイルで産めるか?

 分娩というと、分娩台の上で、仰向けで出産するスタイルを思い浮かべられる方が多いかと思います。仰向けでの分娩は仰臥位分娩と言い、一番多い分娩時の姿勢ではありますが、横向きのまま産むことや、四つ這いの姿勢で産むこと、プールの中で産むことなども可能です。これらの出産スタイルを総合して「フリースタイル分娩」と呼びます。しかし、日本の病院ではフリースタイル分娩はそこまで浸透していないのも現状です。フリースタイル分娩のメリットとしては、産婦さん自身の過ごしやすい姿勢で出産できることや、出産に対する満足感が得られることなどが挙げられます。ただ、分娩時に大きなリスクがないことが条件にはなるため、医師や助産師の判断のもと可能かどうかが決まります。ハイリスクの場合は、分娩の様式が吸引分娩や帝王切開となることもあります。
 どちらが良い悪いではなく、ご自身の状況や希望に沿った選択肢を知り、安心して出産に臨めることが大切です。ぜひ、パートナーやご家族とも相談してみてください。


② 立ち会いや面会に制限はあるか?

 コロナが明け、分娩時の立会いが再開されている病院が多くあります。しかし、パートナーやご家族の立会いに時間制限を設けていたり、上の子の立会いや面会ができない病院も中にはあります。出産時にどの程度家族にそばにいて欲しいのか、産後に上のお子さんなどとご面会をご希望されるかどうかも検討材料の1つとしても良いかもしれません。

③ NICUはあるか?(小児科医師が在籍しているか)

 NICUとは、「Neonatal Intensive Care Unit」の略で、新生児集中治療室のことです。早く生まれた赤ちゃんや小さく生まれた赤ちゃん、呼吸の助けが必要な赤ちゃん、心臓などに病気がある赤ちゃんたちが治療を受け、元気に大きく育つための部屋(治療室)です。妊娠・出産は、赤ちゃんにいつ何が起こるかを事前に想定することが難しいです。そのため、何かあったときに、NICUがあるとすぐに対応してもらえるという安心感は大きいかと思います。

 無痛分娩を行っているか?

 無痛分娩とは、麻酔を用いて出産に伴う陣痛を最小限に抑えることを目的とした出産方法です。無痛分娩は部分麻酔で、ある程度の感覚が残るようにしています。それは、痛みの感覚をなくしたり軽減したりしても、赤ちゃんの頭が出てくるときに陣痛のタイミングでいきむことが必要だからです。また、意識をしっかり保つことが可能なので、生まれてすぐの赤ちゃんを抱っこしたり授乳したりすることもできます。無痛分娩のメリットとしては、痛みの緩和、体力の温存、リラックスできることなどがあげられます。デメリットとしては、分娩時間の延長、麻酔の効果が不十分、無痛分娩による合併症が起こるリスクなどがあげられます。
 一口に無痛分娩と言っても、初産婦にも経産婦にも対応しているか、あらかじめ無痛分娩を行う日を決め計画的に行うのか、自然に陣痛が来るのを待ち、ある程度まで陣痛が強まってから行うのか、施設によって条件や規定は様々です。ご希望の病院がどのような条件・規定で無痛分娩を行っているのか、事前に調べておくと良いでしょう。 

まとめ

 本コラムが、皆さまの出産施設検討の一助になりましたら幸いです。
何かご質問やご相談がありましたら、いつでもお気軽にお声かけください。


戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

この産婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 助産師新居 諒子

経歴

  • 日本赤十字看護大学大学院国際保健助産学専攻 卒業
  • 都内地域周産期センター産科勤務

資格

  • 看護師
  • 助産師

メッセージ

 私は卒業後、地域周産期センターにて妊婦さんや赤ちゃん、そのご家族のケアを実践して参りました。
周産期センターでの勤務では、妊婦さんと関わる機会は多かったですが、地域で生活する女性と関わることは少なかったので、クリニックで幅広い年代の方々のサポートができることを嬉しく感じております。
 当院に来院される皆さまが、受診後に少しでも過ごしやすくなっていただけるよう、助産師として働いていきたいと思っております。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。

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