妊娠中に水ぼうそう(水痘)に感染したら

妊娠中に水ぼうそう(水痘)に感染したら

現在、一部の地域で水ぼうそう(水痘)の感染者増加がみられています。水ぼうそう(水痘)は子供がかかる病気というイメージがありますが、大人が初めて感染すると重症化しやすく、特に妊娠中の初感染は、母体と胎児の両方に影響を及ぼす可能性があるため、細心の注意が必要です。
妊娠中の方、これから妊娠を考えている方、そしてそのご家族は、水ぼうそう(水痘)について正しく理解し、予防対策を徹底することが大切です。


冬~春先に流行水ぼうそう(水痘)の特徴

水ぼうそうの症状は、通常2週間程度の潜伏期間を経て現れます。

水疱瘡(水痘)の症状

  • 【初期症状】 発熱・倦怠感
  • 全身に赤い湿疹が現れる
  • 数日かけて発疹が水ぶくれ(水疱)になる
  • いずれ水疱がかさぶた(痂疲)になる

水疱瘡(水痘)の感染期間

  • 発疹が出始める2日前から、すべての発疹がかさぶたになるまで(通常、発症から4~7日間程度)は、他の人に感染させる可能性があります。

水疱瘡(水痘)の感染経路

  • 空気感染
  • 飛沫感染
  • 接触感染

一度かかると一生免疫が得られることが多いですが、近年はワクチン接種の普及により、子供のころにかからず、免疫を持たないまま大人になる方が一定数います。
大人が水ぼうそう(水痘)に初めて感染すると、子供に比べて重症化しやすく、水痘肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。


赤ちゃんへの影響は?妊娠中に水ぼうそう(水痘)に感染したら

妊娠中に水ぼうそう(水痘)に初めて感染した場合、母体だけでなく、胎盤を通じて胎児にもウイルスが感染し影響を与える可能性があります。影響は感染した妊娠週数によって異なり、流産・先天性水痘症候群(CVS)・早産・胎児発育不全・乳児期帯状疱疹・新生児周産期水頭症などが起こる可能性があります。
いずれの場合も速やかに治療をすることが勧められており、適切な治療によって症状軽減や胎児への影響を予防することができます。

妊娠20週未満の感染先天性水痘症候群(CVS)

妊娠20週以前の水ぼうそう(水痘)初感染によって発症し、皮膚、中枢神経系、眼などに異常を起こします。発生率は最もリスクの高い中期で約1.4%です。

【先天性水痘症候群(CVS)の症状】

  • 皮膚の異常(皮膚瘢痕、欠損)
  • 中枢神経系の異常(大脳皮質萎縮、脊髄萎縮、四肢麻痺、てんかん、小頭症など)
  • 眼の異常(小眼球症、眼球陥没、白内障、脈絡網膜炎など)
  • 四肢・骨格の異常(四肢低形成、内反尖足、など)
  • 胎児発育不全
  • 消化器系の異常
  • 筋萎縮
  • 尿生殖器の異常
  • 精神発達遅滞

妊娠13週~36週頃の感染乳幼児期帯状疱疹

妊娠13週~24週の感染での発症率は0.8%、妊娠25~36週での発症率は1.7%です。水痘罹患歴がないにもかかわらず乳児期早期に帯状疱疹を発症します。

分娩の5日前~産後2日の感染で重症化周産期水痘

分娩前21日~6日に母体が水ぼうそう(水痘)に感染し、生後0~4日の新生児に水ぼうそう(水痘)が発症しても、母体からの移行抗体で赤ちゃんの症状は軽くてすみます。しかし、分娩5日前から産褥2日までの間に水ぼうそう(水痘)を発症した母体から生まれた赤ちゃんは生後に水ぼうそう(水痘)を発症して最も重症化する可能性があります。発症率は30~40%と高く、感染予防と早期治療が重要です。


妊娠中の帯状疱疹について
妊娠中に帯状疱疹を発症した場合は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化であり、初感染ではないため、先天性風疹症候群(CVS)が発生することはないと考えられています。


家族が水ぼうそう(水痘)に感染したら抗体検査について

妊娠中のご自身が水疱瘡(水痘)の既往・抗体がない場合、同居する家族、とくにお子様が感染すると感染リスクが非常に高くなります。そのため、以下の対応を推奨しています。

私には抗体がある?妊娠前の抗体検査

妊娠を希望する女性は、あらかじめ水疱瘡(水痘)の抗体検査(血液検査)を受け、免疫の有無を確認をすることを推奨しています。

水痘・帯状疱疹ウイルス抗体(IgM)¥3,300(税込)
水痘・帯状疱疹ウイルス抗体(IgG)¥3,300(税込)
IgM・IgG同時検査希望の場合¥5,500(税込)
水痘・帯状疱疹ワクチン¥8,800(税込)

感染したらどうしたらいい?妊娠中の対応

妊娠中に抗体がない(免疫がない)ことが判明した場合、家族内で感染者が出た際は、速やかにかかりつけの産婦人科に相談しましょう。
感染予防のため、水ぼうそう(水痘)患者と接触72時間以内に抗ウイルス薬の予防内服などの対応が必要になることがあります。


免疫を持つことと感染回避が大事感染予防対策

最も重要な予防策は、妊娠前に免疫を獲得しておくことです。

妊娠前のワクチン接種

水ぼうそう(水痘)ワクチンは生ワクチンであるため、妊娠中は接種できません。妊娠を考えている方は、抗体検査で免疫がないことが判明したら、妊娠前にワクチン接種を受けましょう。接種後約2か月間は避妊が必要です。

妊娠中の感染回避

妊娠中に水ぼうそう(水痘)の流行期(冬~春先)を迎える場合や、身近に感染者がいる場合は、不要不急の外出を避け、手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策を徹底しましょう。


不安なときは産婦人科へ相談を

水ぼうそう(水痘)についてのリスクを知ると、不安に感じられるかもしれません。しかし、多くの女性はすでに水ぼうそう(水痘)の免疫を持っています。もし、免疫がない場合でも、事前の準備と、万が一感染者に接触してしまった際のはやい対応によってリスクを大きく下げることができます。

  1. 妊娠前に抗体検査を受け、必要であればワクチン接種を済ませましょう
  2. 妊娠中に水ぼうそう(水痘)に感染した疑いや、身近に感染者が出た場合は、自己判断せずにかかりつけの産婦人科医に相談しましょう

早期に適切な治療を受けることで、重症化を防ぎ、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えることが期待できます。「知っている」ことは「備える」ことに繋がり、「備える」ことは「安心」に繋がります。この記事を通じて得た知識を、ご自身と赤ちゃんの健康を守るためにぜひ生かしてください。

最終更新:2025/11/25


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この産婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医春名 百合愛(はるな ゆりあ)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 同大学女性診療科・産科入局後、大学病院・周産期センターにて勤務
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本周産期・新生児医学会 母体・胎児専門医

学会・資格

  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 新生児蘇生法専門コース修了
  • 日本女性医学会 会員
  • 日本生殖医学会 会員

メッセージ

 私は医学部時代に自身が産まれた周産期センターで臨床実習をした際に、生命の誕生の奥深さに感動し、産婦人科医を志しました。大学病院入局後は、産婦人科学全般を学んで専門医を取得し、希望であった周産期分野に従事してまいりました。女性にとって妊娠・出産は大きなライフイベントであり、喜びとともに不安も尽きないと思います。その前後も含めたすべてのライフステージにおける女性が自分らしく健やかに生きるサポートをいたします。産婦人科というとなかなか受診のハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思いますが、安心してご相談いただけるよう丁寧な診療を心がけますので、ぜひお気軽にお越しいただけましたら幸いです。

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 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

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