妊娠中におすすめしないこと2選ー母体のケアに焦点をあててー

妊娠中におすすめしないこと2選ー母体のケアに焦点をあててー

 こんにちは。助産師コラムです。今回は、妊娠中におすすめしないことを2つ説明していきます。一般的に注目されるのは、ナマモノ、お酒、たばこ、カフェイン、薬、旅行などですが、今回お伝えする2つは、赤ちゃんよりもママの身体により焦点をあてたものです。妊娠中はもちろん、産後やもっと先の人生を健康な体で過ごすために必要な2つですので、ぜひご覧ください。
 

1つめ体を冷やすこと

妊娠中は冷えやすい

 妊娠中は、ホルモンバランスの変化により、自律神経が乱れ、体温調整がうまくいかなくなります。また、腹部増大により姿勢が変化したり血管が圧迫されたりして、血液循環が悪くなり、体が冷えやすくなってしまいます。

冷えるとどうなる?

体が冷えてしまうと、血管が収縮し、血液循環が悪くなります。血液循環が悪くなると身体の各臓器の動きも悪くなります。その結果、「おなかが張る」おりものが増える」「頻尿になる」「足がつる」「むくむ」「静脈瘤」「痔ができる・悪化する」「腰痛」「肩こり」「頭痛」「疲労感」「睡眠不足」など、様々なマイナートラブルを引き起こします。
 また、お腹が張る状態が続いたり繰り返されることで、切迫早産や出血を引き起こす恐れがあります。

冷えは出産や産後への影響も

出産時、冷えた子宮は筋肉がかたくなり、児を生み出すために必要な強い収縮ができず、微弱陣痛となる可能性があります。微弱陣痛になると、分娩時間が長くなり母体疲労や児心拍低下などのリスクがでてきます。さらに、冷えにより血液循環が悪いため産後の回復を妨げたり、母乳(母乳は血液から作られます)が不十分に分泌されなくなることも考えられます。

※「冷え」は体感的なものですので、「体温〇度以下が体が冷えた状態」「冷えた状態が〇時間以上続くと悪影響が出る」などと定義づけはできません。また、体が冷えたから上記の産科合併症になるというエビデンスもありません。体を温め血液循環をよくすることでマイナートラブルや体の不調を少しでも緩和できる可能性があるため、下記の項目をご紹介しています。

体を温める効果

 体を温めると、副交感神経が優位になり内蔵機能が高まるため、免疫力アップやリラックス効果をもたらします。また、血液循環が悪くなることで起こるマイナートラブルを改善する効果も期待できます。

すぐできる!冷え対策

・エネルギー源となる三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)をしっかりとる

 とくにタンパク質と糖質は、消化の過程で熱を生み出します。また、この三大栄養素をエネルギーに変換するために必要なビタミンB群(かつお、まぐろ、鮭、魚介、豚肉、鶏ささみ、レバー、バナナ、パプリカ、サツマイモ、玄米、発酵食品)の摂取も一緒にしましょう。

・冷たいもの・体を冷やす食材の取りすぎに気を付ける、加熱して食べる

 体を冷やす食品
 ・精製された食品(白砂糖、白米、小麦製品)
 ・夏が旬・温かい地域でとれるもの(キュウリ、トマト、ナス、オレンジ、バナナなど)
 ※冬が旬でも体を冷やしやすいのは大根、白菜は体を冷やしやすいそうです。あたたかいメニューにして食べましょう。
 ・牛乳、コーヒー、緑茶

・体を温める食材を積極的に摂る

 ・体を温める食材:未精製の食品(黒糖、胚芽米)
 ・冬が旬・寒い地域でとれるもの(にんじん、れんこん、かぼちゃ、ごぼう、ほうれん草、鮭、かつお)
 ・発酵食品
 ・生姜などの香辛料
 ・血管を広げ血行をよくするビタミンE(かぼちゃ、ホウレンソウ、アーモンド、アボカド)

 細々と書きましたが、体を冷やす食べ物だからと摂取禁止にする必要はありません。また、体を温めるからという理由で、嫌いな食べ物を無理やり食べる必要もありません。自分の食生活に取り入れやすい食べ物を温かく…鍋やスープ、オーブン料理などで食べてみてください。

  • 朝、起きたら白湯200mlを20-30分かけて飲む
  • 朝食をとる(朝食は寝てる間に下がった体温と代謝を上げ、冷え改善につながります)
  • 運動をする
  • シャワーではなく入浴をする
  • シャワーではなく入浴をする
  • マフラー、手袋、レッグウォーマー、ひざ掛け、カイロなどで体温を調整する
  • 靴は足の甲や指先が露出されるものではなくスニーカーやブーツを履く

2つめ腹筋のみを利用した起き上がり

 これは、仰向けの状態から起き上がるとき、V字腹筋(上体起こし)をするようにガバッと起き上がる動作のことです。この起き上がり方をしている人、かなり多いです!

 この起き上がり方は、腹腔内圧が上昇するため、腹直筋・子宮・骨盤底筋群に負担がかかります。腹直筋への負荷は腹直筋離開、子宮への負荷はおなかの張り、骨盤底筋群への負荷は、尿漏れ・子宮脱などのリスクを上げてしまいます。

※腹直筋離開
 腹筋が左右に開いてしまうこと。もし腹直筋が離開すると、子宮は横に広がりやすくなり、横に広がった子宮の中で赤ちゃんは、頭位で手足を曲げた姿勢ではなく、横位、骨盤位、膝伸展など、赤ちゃんが自然にとる姿勢ではない姿勢をとるようになります。現在のほとんどの病院・クリニックでは、赤ちゃんが頭位以外の場合、帝王切開分娩を選択します。分娩方法への影響だけでなく、産後、なかなかウエストがもどらなかったり、腰痛や内臓下垂の要因になったりもします。

体に負担をかけない起き上がり方

仰向けの姿勢から起き上がる際、まずは横向きになり、床や台に手をついてゆっくり体を起こす

 この起き上がり方が、妊婦さんに推奨されている起き上がり方です。しかし、いつも同じ方向から起き上がることで骨盤がゆがんだり、手に体重をかけて起き上がることになるため手を痛めてしまったりする可能性もあるので、全員に絶対この起き上がり方がいいとも限りません。

 妊娠中、増大した子宮を支えながらの動きは、どの動き方を選択しても「動きづらい」「痛い」と感じるかもしれません。腹帯や骨盤ベルト、抱き枕なども活用しながら、より楽な動き、体に負担をかけない動きを見つけていくことが必要です。


最後に

 「できそう!」というものは、いくつかありましたか?
妊婦さんの多くは、「赤ちゃんのため」を第一に頑張ってくれますが、赤ちゃんだけでなく、ご自身の身体のケアも大事にしてください。食事について、骨盤や骨盤底筋群のケアについて、もっと詳しく聞きたい!という方はぜひ当院の保健相談へいらしてください。



戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

この産婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 助産師佐藤 友里

経歴

  • 日本赤十字秋田看護大学大学院看護学研究科 卒業
  • 総合周産期医療センターMFICU勤務
  • 産婦人科専門病院・クリニック勤務

資格

  • 看護師
  • 助産師

メッセージ

 当院において、皆さまが快適に妊娠期を過ごしたり、安全でより理想に近い分娩を体験することができるよう、妊婦健診を通してサポートさせていただきたいと思っています。とくに、妊娠中の食事や栄養、分娩経過について、無痛分娩の話題は大好きです。ぜひ、お困りごとや気になることを聞きに来てください!
 婦人科の皆さまも、当院が小さなことでも気軽に相談できる場所になれるよう、丁寧な診療サポートを心がけたいと思っています。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
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