産後シリーズ① 産後ママの身体の回復

産後シリーズ① 産後ママの身体の回復

 こんにちは。本日のコラムは助産師が担当します。
 本日は産後シリーズ①として産後のママの体の回復についてお伝えします。
産後はゆっくり休むようにと言われるけど、それはなぜ?どれくらいゆっくりすればいいの?といった疑問を持つことがあるかもしれません。このコラムが産後の過ごし方へのイメージ作りの一助になれば幸いです。
 産後シリーズ②ではママの心の回復をメインに、③では赤ちゃんと過ごすスケジュールと周りの家族のサポート、④ではパパの気持ちの変化についてお伝えしていく予定です!

8週間(2か月)かかるんです1 産褥期って?

 分娩後、母体が正常に回復するまでの期間(おおよそ6~8週間)を産褥期といい、その期間にある女性を褥婦と呼びます。
妊娠、出産という人生における一大イベントを終えたママの心身は、見た目以上に大きなダメージを受けており、疲労状態にあります。
 妊娠中は姿勢の変化が起こり、ホルモンによって関節がゆるみます。つわりやマイナートラブルが生じる妊娠期を過ごすだけでも大変なことが多いですが、その後には出産が待っています。出産方法にかかわらず体には大きな負担がかかりますし、出血もします。赤ちゃんが生まれてからはゆっくりと休む間もなく、赤ちゃんとの生活が始まります。
 妊娠、出産を経て赤ちゃんと出会い、幸せな日々が始まることは確かです。しかし、出産が終わればママの体は妊娠前にすぐ戻るわけではありません。妊娠期から産褥期までママの心身をいたわり過ごすことは不可欠です!

続いては2 産後の体の回復と起こりやすいトラブルについて

子宮

 妊娠中に大きくなった子宮は約6週間で妊娠前の大きさに戻っていきます。授乳や赤ちゃんとのスキンシップの中でオキシトシンというホルモンが分泌され、子宮の収縮を助けます。子宮が収縮する際には後陣痛と言って、生理痛のような痛みを感じることがあります。後陣痛は経産婦さんの方が強くなる傾向があります。

悪露

 子宮が元の大きさに戻る過程のなかで、子宮の中から排出される分泌物のことです。悪露は、胎盤が剥がれた部分からの出血や分泌物が主な成分です。産後3~4日目までは赤く量も多いのですが、その後はだんだんと褐色に変化し量も少なくなっていきます。また、2週間程度で淡黄色の悪露に変化していき、1カ月健診を迎えるころには気にならなくなる方も多いです。一旦出血の量が減っても活動量が増えることや授乳の刺激などで一時的に量が増えることがありますが、続かなければ心配いらないことが多いです。

★産院を退院してから悪露の量がどんどん増える(2時間ほどで夜用ナプキンがいっぱいになる)、出血が止まらない、腹痛が強い、熱が出る、悪露から悪臭がするといった場合には、すぐに産院に連絡しましょう。

膣や会陰部

 出産時にできた傷に処置をした場合、腫れやむくみ、痛みが続くことがあります。産院を退院するころから徐々に落ち着き、1カ月健診ではよくなっていることが多いです。痛みのある間は円座クッションを使用し、産院で処方された痛み止めを使用しましょう。

★痛みがどんどん強くなる場合、違和感が強く日常生活に支障をきたす場合は産院に相談しましょう。

帝王切開の創部

 帝王切開で出来た傷は術後3日程度で閉鎖しますが、皮膚の下では炎症が続いており、腫れや痛みが生じます。その後新しい細胞が生まれ、傷を埋めていく増殖期が1カ月程度続き、傷に赤みやかゆみが生じることがあります。増殖期を過ぎると、次第に肌色に近くなる成熟期を迎えます。増殖期の間に皮膚が引っ張られたりこすれたりといった物理的な刺激が加わると、肥厚性瘢痕やケロイドになってしまう可能性があります。傷あと専用のテープを使用してケアを行い、負担がかかるような運動は避けましょう。テープは最低でも3カ月、できれば半年以上続けると効果的です。粘着のタイプやシリコン製のものもあります。お肌に合うものを選びましょう。


ほかにもこんなことが・・・3 トラブルと解決方法

寝不足

 シリーズ③でお話していく予定ですが、赤ちゃんが生まれた後、新生児期の1カ月は3時間ごとの授乳があり、出産前のように夜間まとめて眠るのが難しくなります。

☆日中も休めるときは体を横にして目を閉じ、ゆっくりと過ごしましょう。また周りのご家族にもサポートをお願いしましょう。

むくみ

 産後のホルモンバランスと水分バランスの変化、疲労や授乳、抱っこの姿勢など、様々な要因からむくみが強くなります。

☆できるだけ休息をとるようにし、足首を曲げ伸ばしするストレッチを行う、横になる時に足を高くする、足を冷やさないように心掛ける、やさしい着圧ソックスを履くことも効果的です。

痔・便秘

 妊娠中に子宮が大きくなると周りの血管や腸を圧迫し、妊娠中のホルモンの影響で便秘がちになると痔になることがあります。また出産時のいきみによる肛門への負担や会陰の傷の影響、また産後の便秘(授乳中の水分不足や活動量の低下により便秘になりやすいのです)によっても痔になる可能性が高くなります。

☆便秘にならないように水分・食物繊維や発酵食品を取ることを心がけましょう。症状が強い時には産院や肛門科で痔に対する薬を処方してもらえますので適切に使用しましょう。

関節痛

 出産後は関節の痛みを感じる方が多いです。妊娠、出産を通してホルモンバランスが変化すること、授乳によりカルシウムが不足する事、赤ちゃんのお世話によって今までにしなかった姿勢をとり足腰や腕、手首、手に負担がかかる生活になる事など様々な原因があります。

☆長時間同じ姿勢をとらないようにし、こまめにストレッチを取り入れましょう。症状が強く心配な時には整形外科を受診しましょう。

尿漏れ

 出産時は骨盤底筋への負担が大きく、その影響から産後尿漏れする方が多くいます。大抵は6~8週間で回復することが多いです。

☆産褥期はできるだけ骨盤底筋に負担をかけないようにしましょう。具体的にはゆっくり休む、重いものを持たない、排尿・排便時に強く力を入れない等があります。また、骨盤底筋体操で骨盤底筋を鍛えていくのも大切です。骨盤底筋体操に関してはスタッフにお聞きください。

おっぱいのトラブル

 様々な原因で乳腺炎や、乳房・乳頭のトラブルが生じることがあります。お困りの際は産院や、当院の助産師外来(母乳外来)へお越しくださいね。よくあるトラブルについては今後コラムでお話していく予定です。

できるだけゆっくりしましょう4 産褥期の生活の目安

産後1~2週目

 体調やご家庭の状況によりますが、骨盤底筋の回復にも関わりますので、出来る限り安静に過ごしましょう。入院中と同じような生活ができるとよいですね。産後ケア、ベビーシッターを利用するのもおすすめで、お住いの自治体によって助成が出ることがあります。

産後2~3週目

 少しずつ体が回復し、元気になったと感じる方もいるかもしれませんが無理は禁物です。夜間の授乳による睡眠不足もある時期ですので、周りの方にサポートしていただき、できるだけ休息をはさみながら過ごしましょう。自治体によっては2週間健診があります。健診等で外出する際は自家用車やタクシーを利用し、ご家族に付き添ってもらうと安心です。

産後3~4週目

 退院後の生活に少しずつ慣れてきたころだと思います。簡単な家事や近所のお散歩などをしても良いころですが、日中赤ちゃんが寝たときに一緒に体を休めるようにしましょう。重いものを持ったり体に負担のかかることは避けましょう。

産後4~5週目

 産院の1か月健診を受ける時期です。健診で問題なければ、入浴や性交渉も可能となる時期です。

産後6週目以降

 この時期より日常生活に移行できる方も多く、産休が終わり職場復帰となる方もいる時期です。しかし体の回復には個人差があるため、引き続き無理をせずに過ごしましょう。この時期からスポーツや自転車・自動車の運転も再開できます。


まとめ

 今回は産後の体の回復を中心にお話ししました。内容はあくまで一般的なものであり、産後の経過には個人差がありますので、この通りに行かなくても過度に心配せず、お困りの時には当院婦人科外来や、助産師外来の育児相談、母乳相談にいらしてくださいね。当院で妊婦健診を受けてくださっている方はもちろん、産後の初診も大歓迎です(その場合はお産について詳しくお伺いすることがあります)。産後に健やかに過ごせるよう、サポートさせていただきます。シリーズ②では産後の心の回復について詳しくお伝えしていきます。


戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

この産婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 助産師玉置 愛加

経歴

  • 東京都立大学健康福祉学部看護学科、助産学専攻科卒業
  • 都内地域周産期センター産科・NICU勤務

資格

  • 看護師
  • 助産師

メッセージ

 私は助産学専攻科を卒業後、地域周産期センターにて妊婦さんや産婦さん、お母さんと赤ちゃんのケアに携わってまいりました。
また、NICU・GCU病棟での経験もあり、小さく生まれた赤ちゃんや疾患を抱える赤ちゃんのケアも行ってきました。
前職場の助産師外来では妊婦健診を担当し、産後健診ではお母さんのお話をたくさん聞かせていただきました。その経験を当クリニックの助産師外来でも生かせるよう、妊娠期やお産、産後を心も体も健やかに過ごせるよう、微力ながらサポートさせていただけたらと思います。
 また、婦人科においては、安心して診察を受けていただけるように診察のサポートを努めさせていただきます。
どのようなライフステージにおいても「しんどいな、大変だな」と感じるときには、言葉にするだけでも心が軽くなることがあります。クリニックでいつでもお待ちしておりますので、ぜひお声掛けください。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。

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