不正性器出血

不正性器出血

 生理以外の時期や閉経後一定の期間が経った後の性器出血は不正性器出血と呼び、産婦人科を受診するきっかけの1つとなります。出血している期間や量によっても症状は様々となります。不正性器出血の原因には生命に関わる婦人科の病気も存在するため症状があったときに適切な検査・診察・治療が受けられるよう日頃より正しい知識を得て、備えておく必要があります。

不正性器出血とは?

不正性器出血の定義

 生理時期以外もしくは閉経後に性器から出血することを不正性器出血といいます。
最近では病気が原因でない出血を除き、異常出血(AUB: Abnormal uterine bleeding)と呼ぶこともあります。これは「妊娠性出血や腟、子宮腟部からの出血を含まない,子宮内腔および頸管からの標準的な月経以外の出血」を表します。
出血の色や量には定義がありません。不正性器出血は鮮血から褐色まで様々であり、量も人によって異なります。不正性器出血の種類には排卵期に起こる中間期出血など病気ではないものもありますが、重大な病気のサインであることもあります。そのため自己判断はせず、婦人科を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。


不正性器出血の種類

不正性器出血は①機能性出血 ②器質性出血 ③排卵期出血 ④そのほかの出血に分けられます。

①機能性出血

 機能性出血はホルモンバランスの乱れによって生じ、原因となる病変はありません。ご自身の疲労やストレスによる卵巣(黄体)機能不全・無排卵周期症・月経異常より生じることがあります。ライフステージの変化しやすい思春期や更年期など、ホルモンバランスが乱れる可能性の高い時期に生じやすいです。自然に止まらない出血は貧血の原因となるためホルモン剤などを使用した治療介入が必要になる場合もあります。

②器質性出血

 器質性出血とは腟や子宮、卵巣などの婦人科臓器における病気によって生じている性器出血です。具体的には子宮内膜症、子宮筋腫、腟炎、子宮腟部びらん、子宮頸管ポリープ、子宮頸がん、子宮体がんが挙げられます。早急に適切な治療が必要な病気もあり、できるだけ早い受診が重要となります。

③排卵期出血

 排卵期出血とは月経と次の月経のちょうど中間の時期に見られる性器出血のことです。排卵期は卵胞ホルモンの分泌が一時的に低下することにより症じ、片方の卵巣周辺の痛みを自覚される方もいらっしゃいます。排卵期出血は病気ではなく、ほとんどの場合は治療の必要がありません。ただし毎月みられる場合には、低用量ピルを内服することで改善させることもあります。

④そのほかの出血

 そのほかの出血としては妊娠による着床出血や、そのほかのホルモン値の異常により起こる出血、性交時に膣粘膜の損傷より起こる出血があります。

不正性器出血の原因

 不正性器出血の原因は大まかに6種類①炎症によるもの②ホルモン異常によるもの③子宮膣部びらん④良性腫瘍⑤悪性腫瘍⑥妊娠に関連するものに分けられます。

①炎症によるもの

 炎症によるものとは細菌感染が主な原因で起こる子宮内膜炎、膣内の細菌叢のバランスが崩れた時に起こる細菌性膣炎、更年期以降に見られる萎縮性腟炎があります。

②ホルモン異常によるもの

 ホルモン異常によるものとは、ストレスや過度なダイエットによる卵巣機能不全や排卵障害からホルモンバランスが崩れることが最も多くみられます。そのほかに思春期や閉経期においてもホルモンバランスが崩れやすく性器出血の症状があわれることがあります。

③子宮膣部びらん

 子宮膣部びらんとは子宮の入り口付近が赤く見えることを指しますが若い女性では一般的にみられます。ただし、膣部びらんの一部では初期の子宮頸がんであることもあります。そのため定期的な子宮頸がん検査が重要となります。

④良性腫瘍

 良性腫瘍では子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫が不正性器出血の原因となることがあります。

⑤悪性腫瘍

 悪性腫瘍では子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、子宮膣がんにおいて不正性器出血が症状とあらわれることがあります。

⑥妊娠に関連するもの

 着床出血のほかに妊娠に関連した性器出血としては、絨毛膜下血腫・切迫流産・切迫早産・異所性妊娠(子宮外妊娠)で見られます。妊娠中では出血は通常起こらないため、症状が見られた際には速やかに主治医に相談するようにしましょう。

不正性器出血があったら?

不正性器出血で受診した方がいいタイミング

 生理でないのに性器出血が3日間以上続く、 出血の量が多い(目安としてはおりものシート以上)、 出血とともに動悸やふらつき・意識が遠のくなどの貧血様症状が見られる場合は気づかない間に貧 血となっている可能性があります。貧血の状態は身体に負担がかかってくるため救急外来や産婦人科を受診して検査を受けましょう。また激しい腹痛が伴う場合は緊急性のある病気が隠れている場合 がありますのでこの場合も早めに受診するようにしましょう。そのほか性器出血が断続的に見られる場合も産婦人科を受診した方がいいタイミングとなります。妊娠中では通常出血は認めないため、症 状のある場合は主治医に早めに相談するようにしましょう。


不正性器出血の受診する時に必要なもの

 産婦人科を受診する際には今までの性器出血が行った内容(日付や量)とともに医師に伝えておきたいそのほかの症状をメモしておくと、スムーズに検査を始めることができます。またその際にはここ最近の生理のリズムとの関連性が医師の判断に有用なことが多くあります。日頃からスマートフォンのアプリやメモでも良いのでご自身の生理関する記録や可能であれば基礎体温を残すようにしましょう。多くのクリニックではナプキンを提供できることがほとんどですが、念の為ご自身でも準備されるとより安心に診察を受けることができます。診察時の服装に制限はありません。ただし性器出血がある場合は診察時に処置を行わなければならない場合もあります。そのため少し汚れても差し支えない服装にすると良いでしょう。

不正性器出血に対して行う検査

 不正性器出血の把握、原因を特定するために内診台での内診・検査を行います。ほとんどの場合は現在の状況を確認するために経膣超音波検査による画像の検査を行います。また、婦人科検診をしばらく受けておらず子宮頸がんの可能性も否定できない場合や子宮体癌が疑われる場合は同時に子宮頸がん検査や子宮体がん検査を行います。生理不順やストレス要因、ここ最近ダイエットしているなどホルモンバランスの変化が考えられる場合は採血によるホルモン検査を行います。問診・身体診察・性器出血の程度から貧血を疑う場合には同時に血液検査を行い、必要に応じて鉄剤による貧血治療を並行して行うこともあります。婦人科における検査が初めてという場合は事前に伝えるようにしていただければ、受けられる範囲内で検査を工夫することもできます。不安のある場合はスタッフに相談してみましょう。

不正性器出血の治療

不正性器出血で受診しても異常がなかった場合の治療方法

 診察にて大きな病気がなかった場合、多くは経過を見ることにより自然に出血が止まります。出血が長く続いている場合は止血剤や女性ホルモン剤を使用して止血を試みていきます。また気づかない間に貧血となっている可能性があるため、必要に応じて鉄剤による並行治療が必要となります。妊娠を望んでいる方や、ホルモン剤投与による合併症が懸念される方には非ホルモン剤での治療である止血剤を優先して使用します。止血剤であるトラネキサム酸は性器出血および月経時の出血を40~60%減少させるとされています。女性ホルモン剤では経口避妊薬(OC/LEP)いわゆるピルやプロゲステロン、商品名ミレーナで知られているレボノルゲストレル放出IUDを使用してホルモンバランスのリセットを試みます。また炎症により不正性器出血来している場合には抗生剤を使用することもあります。


不正性器出血に対する検査で良性の腫瘍があった場合の治療方法

 不正性器出血の原因となる良性腫瘍には子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫が挙げられます。

子宮頸管ポリープ

 ポリープの大きさが小さい場合は外来にて当日取り除くこともできます。大きさが大きく処置およびその後の出血が多いと予測される場合には手術室で行われることもあります。

子宮内膜ポリープ

 膣より子宮の入り口から子宮鏡と呼ばれる機械を挿入して子宮内部にできた子宮内膜ポリープを切除します。入院で行えるのか外来で行えるのかは施設によって異なりますので希望される方は事前に問い合わせてみましょう。

子宮筋腫

 子宮筋腫が不正性器出血の原因となっている場合は子宮筋腫の大きさや場所・貧血の程度・閉経までの予測期間を考慮しながらご本人と相談して治療方針を決定していきます。ホルモン治療による生理・出血のコントロールのほか手術により摘出することもあります。子宮筋腫の大きさ・場所・症状ににより腹腔鏡手術・開腹手術・子宮鏡手術が選択されます。

不正性器出血に対する検査で悪性が疑われた場合の治療方法

 女性において不正性器出血として症状が現れる悪性の病気として子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮膣がんが挙げられます。

子宮体がん

 子宮体がんの多くは女性ホルモンであるエストロゲンが関与しています。一部関与しないものもあります。初期の典型的な症状として不正性器出血が見られ、産婦人科の検査で判明することが多い病気です。子宮体がんに対する治療は手術療法と化学療法が中心となります。また妊娠を望んでいる方や子宮体がんの初期段階など条件によっては黄体ホルモン療法と子宮内膜全面そうは術を組み合わせながら子宮を温存する治療が可能な場合があります。

子宮頸がん

 初期がんの初期では多くが無症状で経過します。病気が進行するに従い、性交後の出血、不正性器出血などの症状が現れます。治療法は主に手術療法、化学療法、放射線治療となります。初期の段階であれば子宮頸部円錐切除術による子宮を温存する治療が可能です。子宮頸がんの特徴としてはほかの婦人科がんに比べて若い女性にも多く、妊娠・出産に影響することもあリます。そのため定期的な子宮頸がん検査による予防や早期発見が重要です。

卵巣がん

 卵巣がんの初期段階では無症状のことが多く、早期発見が難しい病気の1つです。直接検査のできない臓器のため、手術を行うことによりがんの広がりや種類を把握して最終的な診断となります。治療は主に手術による手術進行期分類を行い、必要があれば化学療法を追加します。妊娠の希望がある場合はご本人と十分に話し合った上で子宮と病気の発生していない側の卵巣・卵管を残すことにより、将来の妊娠への可能性を残します。

不正性器出血まとめ

 不正性器出血は重大な病気が隠れていることがあります。そのため症状があるときは一度産婦人科医に相談するようにしましょう。当院では女性医師が診察を行います。患者様の気持ちに寄り添いながら診療を行ってまいります。初めての産婦人科受診でも安心してご相談ください。

戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

婦人科

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 戸越銀座レディースクリニックは女性の様々な世代において起こりうる身体の変化・お困りごとに対して寄り添い、快適に過ごせるよう最適な診療を提供いたします。
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オンライン診療

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 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
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産科・妊婦健診

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 当院には周産期施設にて勤務してきた女性医師・助産師が在籍しております。妊娠・出産前後に関するご相談をお受けします。妊娠を通して変化する心と身体に寄り添った診療を提供いたします。
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婦人科検診・ドック

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 戸越銀座レディースクリニックでは定期検査・婦人科検診を含めた婦人科診療に力を入れています。女性の一生に寄り添えるクリニックを目指します。
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自費診療

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 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
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この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 日本医科大学付属病院 初期研修
  • 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
  • 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
  • 複数企業にて嘱託産業医

学会・資格

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
  • 日本思春期学会 認定性教育講師
  • 日本生殖医学会会員
  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 日本女性心身医学会 会員
  • 日本医師会認定産業医

メッセージ

私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3丁目1−2 地下1階
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。

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