ピル(経口避妊薬)

ピル(経口避妊薬)

  ピルは女性の避妊や月経に関連したトラブルの改善など様々な目的で使用されており、ここ数年で徐々に認知されてきています。ピルの効果や使用方法などについて理解し、安全かつ効果的な使用ができるようここでは基本的な知識をご紹介します。

ピルについて

ピルの基本的な説明ピルとは?

 ピル(経口避妊薬)とは卵巣で作られる2種類の女性ホルモンである卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロン(プロゲスチン)が配合された医薬品です。ピルは自然な排卵を抑制し、子宮内膜の成長を抑制する効果があります。この効果を利用して自費では避妊目的に、保険診療では治療目的に使用されています。


ピルはどのような種類があるの?

 ピルには大まかに自費では避妊目的に、保険診療では治療目的に使用されています。避妊目的ではOC(Oral Contraceptive)、治療目的ではLEP(Low dose Estrogen Progestin)という呼び名になりますが、成分としては全く同じです。
 ピルにはエストロゲンの量やプロゲステロンの種類、服用スケジュール、服用日数によってさまざまな商品があります。大きな違いとしては含まれているプロゲステロンにより世代で分けられます。
 第一世代ピル(三相性)
  エストロゲンとしてエチニルエストラジオール(EE)とプロゲステロン(P)としてノルエチステロンが含まれています。(商品名:シンフェーズ、ルナベル、フリウェル)
 第二世代ピル(三相性)
  EEとPとしてレボノルゲストレルが含まれています。第一世代と比較して、血栓症のリスクが低く副作用が少なくなる傾向があります。(商品名:トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユ、ジェミーナ)
 第三世代ピル(一相性)
  EEとPとしてデソゲストレルが含まれています。第一、第二世代と比較して、吐き気などの副作用が低く、継続的な使用時に起こる安全性が高いとされています。(商品名:マーベロン・ファボワール)
 第四世代(一相性)
  EEとPとしてドロスピレノンが含まれています。他のピルとの大きな違いは男性ホルモン(アンドロゲン)作用がないためニキビなどの肌トラブルが少ないとされています。(商品名:ヤーズ)

 ピルの世代による違いは効果や副作用の違いにつながります。副作用で合わなかったピルでも世代を変えてみると副作用が出なくなるということもあります。医師と相談し、症状に最適なピルを選ぶことが大事になります。

ピルを試したい方ピルの使い方は?

 ピルの使い方には大きく3つのポイントがあります。

①最初のピルの服用
 ピルの錠剤は28日型の自然の生理周期と同じにするため、通常28錠または21錠が1枚のパッケージに含まれています。1日1錠ずつ服用しますが、最後の7日間はホルモンの含まれない非有効剤もしくは休薬となります。初回のピルは生理の1日目から5日目の間に内服を開始します。
②スケジュールの決定
 毎日同じ時間に1錠を服用する必要があります。特定の開始する曜日や内服する時間を選ぶと忘れることなく服用しやすくなります。

 ピルの内服中はいつでも相談できるかかりつけ医を決めておくことも大事です。飲み忘れや薬の内服中に判断に迷う場合は主治医に一度相談するようにしましょう。
 

ピルをもらうには・・・・・・ピルは何のための薬?どこでもらえるの?

避妊目的としてピル(OC)を自費で買う場合

 ピルは女性ホルモンを利用して月経周期を調整する避妊方法です。ピルは非常に効果的な避妊方法の1つです。
 避妊の効果を比較する指標としてパール指数というものがあります。パール指数とは100人の女性がある避妊方法を1年間実施した場合の妊娠数を指しパーセント(%)で表されます。パール指数1%とはその避妊方法を1年間行った100人の女性のうち1人が妊娠したということです。つまりパール指数が低ければ低いほど避妊方法としては効果的ということになります。
 ピルのパール指数は0.3%(正しく内服できている場合)とされています。他の避妊方法との比較として男性用コンドームは2%、ミレーナなどの子宮内レボノルゲストレル徐放システム(IUS)は0.5%となります。ピルは非常に効果的な避妊方法ではありますが、飲み忘れなど正しく内服されていないと効果を発揮できないためご自身で管理する必要があります。
 日本ではピルは医療用医薬品のため市販で購入することはできません。医師の診察及び処方のもと医療機関で購入することができます。しかしピルは海外サイトなどのインターネットを経由して個人で輸入・購入をすることもできます。自己流でピルを使用した場合、最大限の効果を発揮することができないこともあります。また副作用もある薬となります。購入を検討する場合は医療機関を受診し、医師の指導者と適切な使用をするようにしましょう。


病気の治療としてピル(LEP)を保険で処方する場合

 ピルは月経困難症に対して保険で処方することができます。月経困難症とは女性の生理中に生じるお腹の痛みや身体の不調のことを指します。症状には個人によって大きく異なりますが、主に下腹部痛・吐き気・頭痛・めまい・下痢もしくは便秘・疲れやすさ・イライラなどがあります。
 また月経困難症は原因により2種類に分けられます。診察では明らかな病気は認めないが、生理的な変化やホルモンバランスの変化により生じる機能性月経困難症と子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気が関連している器質性月経困難症があります。
 いずれの種類にせよ生活の質に悪影響を及ぼしている場合はピルの使用による改善が見込まれます。症状がひどい場合や日常生活に支障をきたしている場合には一度産婦人科医に相談することをおすすめします。

ピル内服中に気をつけるべきことピルの3大副作用

ピルの重要な副作用①ピルの副作用:静脈血栓塞栓症

 ピルの副作用の中で最も注意すべき重篤な病気として静脈血栓塞栓症があります。飛行機に長時間乗ることで起こる「エコノミー症候群」で知られている病気となります。静脈血栓塞栓症とは血液を心臓まで血液を送る深部静脈と呼ばれる血管に血栓(血の塊)ができた状態のことです。この血管は主に足にあります。そのため入院中や飛行機の上など長期間同じ体勢をとっている場合に下半身の血液の流れが悪くなり、血栓ができやすくなります。ピルを使用していると、薬に含まれる女性ホルモンのエストロゲン作用で血が固まりやすくなる傾向になります。静脈血栓塞栓症の症状は胸の痛み、呼吸のしづらさ、頭痛、しゃべりづらさ、ふくらはぎの痛みやむくみがあります。また肥満(BMI)・喫煙・高齢女性・静脈血栓塞栓症の家族歴・手術前後の方・産後前後の方も副作用のリスクが重複するためピルの使用は禁忌もしくは医師の慎重な判断のもとで投与が行われます。
 静脈血栓塞栓症はピルの重篤な副作用であるため長い期間に渡り使用する場合は採血を用いた定期的な健康診断を受けることが望ましいです。


ピルに起こることが多い副作用②ピルの副作用:不正性器出血

 ピルを開始してみたものの途中で中止してしまう副作用で最も頻度が高いのが不正性器出血となります。ピルを使用開始した人の20%が経験するとされています。ただし多くの場合は使用を継続できます。そして使用を継続していると、不正性器出血も次第に減少することがわかっています。不正性器出血の副作用が見られた場合には自己判断で中止せずに一度産婦人科の主治医に相談してみましょう。

その他の副作用③ピルの副作用:吐き気

 ピルの副作用で見られる頻度として2番目に多いのが吐き気です。使用を続けることによって1~3ヶ月ほどで次第に症状がおさまることがほとんとです。ピルの内服を就寝前にするなど工夫してみるのも良いでしょう。またピルには第1世代から第4世代までさまざまな種類があります。種類・商品により含まれる成分も異なるため、ピルの種類を変更することにより使用できる可能性があります。副作用で吐き気がある場合は一度主治医に相談してみましょう。

まとめ

 ピルはさまざまな種類があり使用する目的もさまざまです。ピルを興味のある方は婦人科医師に相談の上、使用するようにしましょう。当院でもピルに関する相談を承っています。ぜひお声かけください。

戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

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 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
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この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 日本医科大学付属病院 初期研修
  • 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
  • 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
  • 複数企業にて嘱託産業医

学会・資格

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
  • 日本思春期学会 認定性教育講師
  • 日本生殖医学会会員
  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 日本女性心身医学会 会員
  • 日本医師会認定産業医

メッセージ

私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3丁目1−2 地下1階
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅徒歩4分

時間/曜日
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14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
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★…土曜日(毎週), 日曜日(月2回不定期)は8:30-11:30
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