子宮がんには子宮の入り口付近にできる子宮頸がんと子宮内の内膜にできる子宮体がんに大まかに分けられます。それぞれ発生の仕方が異なり、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって発症する子宮頸がんに関しては、マススクリーニングによる定期的な検診が勧められています。
子宮頸がんってどんな病気?
子宮頸がん検診の現状
現在の子宮頸がん検診は、厚生労働省の「がん予防重点教育及びがん検診実施のための指針」に基づき市区町村が実施する住民検診、事業者や保険者が実施する職域検診、その他個人が任意で受けるがん検診として行われています。子宮頸がんはその罹患率の高さから、がん検診による早期発見・早期治療により死亡率が低下する科学的根拠が確立されたものとして、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんとともに国から定期的な実施が推奨されています。特に子宮頸がんは若年での罹患率が高く、20歳以上の女性を対象に、2年に1回の行うこととされています。早期発見・早期治療により子宮を失ってしまうリスクも下げられます。
子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)
子宮頸がん発症のほとんどが、高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染によるものとわかっています。HPVは性交渉により感染し、多くの場合自然排除されますが、ヒトの免疫システムにより数年から数十年排除されずに持続することが子宮頸がんの発症につながると考えられています。HPVは200種類以上の型があり、一部が子宮頸がんの原因となる高リスク型に分類されます。この高リスク型HPVの子宮頸部への感染が検出できるHPV-DNA検査もあり、子宮頸部細胞診との併用により精度の高いがん検診が可能になることが考えられますが、現時点で日本においては死亡率の低下につながる根拠が不十分であることから、一部の補助的な検査にとどまっています。
子宮頸がん予防〜HPVワクチン
子宮頸がんの予防、つまり高リスク型HPV感染の予防として、HPVワクチンの接種が推奨されています。現在日本では、性交渉前の接種を想定し、小学校6年〜高校1年相当の女子を対象に公費による定期接種が行われています。予防できるHPVの種類によって2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類があり、それぞれ合計2回から3回の接種が必要になります。サーバリックスおよびガーダシルは子宮頸がんの原因の50〜70%、シルガード9は80〜90%を防ぐとされていますが、20歳以降は子宮がん検診を定期的に受けることが推奨されます。平成9年度から平成18年度生まれの女性で、定期接種を逃してしまった方は2025年3月までキャッチアップ接種が可能ですので、是非ご相談ください。
子宮頸がん検診
子宮頸がん検診の方法〜問診、視診、細胞診
子宮頸がんの検診では、まず問診として最終月経や妊娠・出産の経験、検診受診の状況や不正出血の有無などを確認します。内診台ではクスコ(腟鏡)という器具を膣内に入れて、子宮の入り口の状態を視診で確認します。細胞診では、専用のブラシやヘラで子宮頸部から細胞をこすり取ります。その際出血をすることがありますので、ナプキンの使用をお勧めします。なお、性交渉未経験の方に関してはHPV感染のリスクが低く、検診を受けるメリットが少なくなるため、ご相談の上で実施するかをご判断いただきます。
細胞診判定と運用
細胞診で採取した細胞は、細胞診の専門家が顕微鏡で調べます。月経中は多量の血液成分が混ざり検査の精度が落ちてしまいますので、なるべく避けることが望ましいでしょう。精密検査不要(NILM)と判定された場合には、次回の検診を受診しましょう。要精密検査(ASC-US、ASC-H、LSIL、HSIL、SCC)と判定された場合には、さらなる検査が必要ですので産婦人科を受診しましょう。精密検査にはHPV検査、コルポスコープ検査、組織診などがあり、子宮頸がんやその前がん病変である子宮頸部異形成や上皮内がんの状態になっていないか確認します。
治療や経過観察の方法
精密検査の結果、子宮頸部軽度異形成〜中等度異形成以下の場合には、進行しないか定期的な診察が必要になります。子宮頸部高度異形成、上皮内がん以上の場合には、子宮頸部円錐切除術という手術で治療および進行具合の診断をする必要があるため、手術可能な施設にご紹介します。
子宮体がん検診
子宮体がん検診の現状
子宮体部の内膜細胞診による子宮体がん検診は、現在のところ子宮体部がんの死亡率減少効果について根拠となる報告はなく、子宮頸がん検診が無症状の女性を対象に一様に実施するmass screeningであるのに対して、子宮体がん検診は症状を有する患者を対象としたselective screeningに位置付けられます。
子宮体がん検診の適応
『産婦人科診療ガイドライン』においては、厚生労働省の「がん予防重点教育及びがん検診実施のための指針」に基づき、最近6ヶ月以内に不正性器出血(一過性の少量の出血、閉経後出血等)、月経異常(過多月経、不規則月経等)および褐色帯下のいずれかの症状を有する場合に検査を行うことが推奨されています。子宮体がんの高リスク因子として、①早発月経、遅発閉経、未妊、未産、多嚢胞性卵巣症候群、エストロゲン過剰状態などのホルモン的因子、②肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病因子、③リンチ症候群などの遺伝的因子などがあります。子宮体がんの好発年齢である40歳から50歳以降においては、子宮頸がんを上回る罹患率であるため、症状がある場合や高リスク因子が当てはまる場合には医療機関を受診し相談しましょう。
まとめ
子宮頸がんは大多数がHPV感染によるという原因がわかっていること、前がん病変での診断、治療が可能なことからも、無症状の女性において定期的な検診が勧められます。
診療案内
戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。
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この婦人科コラムを書いた人
戸越銀座レディースクリニック 副院長・産婦人科専門医春名 百合愛(はるな ゆりあ)
経歴
- 日本医科大学医学部卒業
- 同大学女性診療科・産科入局後、大学病院・周産期センターにて勤務
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
学会・資格
- 日本周産期・新生児医学会 会員
- 新生児蘇生法専門コース修了
- 日本女性医学会 会員
- 日本生殖医学会 会員
メッセージ
私は医学部時代に自身が産まれた周産期センターで臨床実習をした際に、生命の誕生の奥深さに感動し、産婦人科医を志しました。大学病院入局後は、産婦人科学全般を学んで専門医を取得し、希望であった周産期分野に従事してまいりました。女性にとって妊娠・出産は大きなライフイベントであり、喜びとともに不安も尽きないと思います。その前後も含めたすべてのライフステージにおける女性が自分らしく健やかに生きるサポートをいたします。産婦人科というとなかなか受診のハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思いますが、安心してご相談いただけるよう丁寧な診療を心がけますので、ぜひお気軽にお越しいただけましたら幸いです。
戸越銀座レディースクリニックについて
品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。
〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分
時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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17:30-19:00 | × | ⚪︎ | × | ⚪︎ | × | × | × |
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