年代を問わず、「寝つけない」「眠りが浅い」「ちゃんと寝たのに眠い」「寝ているのに疲れがとれない」という悩みをよくききます。忙しい日々を乗り切るために、睡眠不足の解消は必須です。ちょっとした日々の工夫ですが、眠りにつきやすくする・睡眠の質を高めるためにできる工夫を理由とともにお伝えします。
1つめセロトニン・メラトニンを利用する
※セロトニン…必須アミノ酸であるトリプトファンから生合成される脳内の神経伝達物質のひとつ。別名幸せホルモン。
※メラトニン…睡眠や覚醒のリズムを調節するホルモン。 睡眠ホルモンと呼ばれている。起床して朝日を浴びた約15時間後から血中のメラトニン量が増加し、眠気を誘う働きをしている。また、運動や深呼吸でもメラトニンの増加につながるといわれている。
トリプトファンは、セロトニンの原料①セロトニンの原料である食べ物を食べる
トリプトファンは、卵、バナナ、豆乳、乳製品(チーズ、ヨーグルト)、大豆製品(味噌、納豆、豆腐)に多く含まれているといわれています。
また、トリプトファンは必須アミノ酸の1つなので、EAA(必須アミノ酸)サプリメントを活用するのもおすすめです。朝起きた時、そして夜寝る前のトリプトファン摂取により睡眠の質を高める効果が期待できます。睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」のサプリメントは日本では販売されていないため、メラトニンをつくるセロトニン、セロトニンを作るトリプトファンを摂る必要があります。
②日中、日光を浴びる
日光を浴びることで、「セロトニン」が分泌されます。セロトニンは睡眠ホルモンである「メラトニン」の原料になるため、セロトニンの量が少ないと、つくられるメラトニンの量も少なくなってしまうといわれています。とくに冬場は日照量が減ってしまうため、意識的に日光を浴びたり部屋を明るくして過ごしたりする必要があります。
2つめ副交感神経が優位になる環境を整える
①リラックスタイムを設ける
日中に受けたストレスや緊張による交感神経が優位な状態が睡眠時まで続くことで睡眠にも影響を及ぼします。一方、副交感神経が優位になることで、体がリラックスモードにはいります。
夜眠る前に38~40度程度の湯舟に15分程浸かる・半身浴の場合は30分ほど行うことで、身体があたたまり血行が良くなり、リラックス効果が期待できます。身体のコリをほぐすマッサージや軽いストレッチもオススメです。これら以外にも、好きな香りや趣味を楽しむことでも心が癒され、ストレスが軽減するかと思います。忙しい日々ですが、毎日少しでもリラックスできる時間を設けてみてください。
②寝る前のスマートフォンやパソコンなどはなるべく控える
スマートフォンやパソコンの画面から放出されるブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンを減少させることで知られています。メールやLINEなどで気持ちが不安定になる場合もあるので、寝る直前にスマートフォンやパソコンを操作するのをやめてみましょう。
3つめ食べ物・飲み物の工夫をする
①寝るときの満腹・空腹を避け、少量の糖質をとる
少量の糖質を摂取すると、インスリンの影響で副交感神経が優位になり、睡眠の質が高まるといわれています。「糖質」を多く含む食べ物は米やイモなどの炭水化物ですが、野菜など糖質の少ないものを食べた後にも血糖値はやや上昇しますので、糖質にこだわらず、夜も適度な量の食事をとることが望ましいと考えられます。満腹・空腹状態での睡眠がよくないとされる理由は下記のとおりです。
<満腹で寝ると…>
寝るときに胃に食べ物がある、とくにそれが消化に時間のかかるもの(炭水化物、脂分の多いもの)だと、その消化のために消化器官が動き続け、睡眠の質が下がるといわれています。
<空腹で寝ると…>
空腹状態で眠ると、睡眠中に血糖値が低下します。血糖値が低下すると、血糖値を上昇させるためにアドレナリンやコルチゾールなどの興奮系のホルモンが分泌されることで、交感神経が優位になってしまいます。その結果、中途覚醒、寝汗や歯ぎしり、鮮明な夢・悪夢、睡眠の質の低下、朝起きた時の頭痛、日中の慢性疲労などがみられてしまいます。
「少量」「適量」の目安が難しいかと思いますが、夜ご飯の時間や食事内容によるので、寝る3時間前に食べる夜ご飯であれば満腹にならない量(腹7~8分目)、夜ご飯の時間が遅く、ご飯を食べてから寝るまでにあまり時間がない場合は、片方の手のひらに収まるくらいの炭水化物を目安にしてみるのはどうでしょうか。
③カフェイン摂取の時間や量を調整する
カフェインは、覚醒作用、疲労の軽減、むくみ・頭痛の改善などに効果的です。摂取後30分~2時間程度で血中濃度が最高になり、半減期(体から半分なくなるまでの時間)は2~8時間後(平均4~5時間)といわれています。個人差が大きいので一概には言えませんが、午後にカフェインを摂取することで交感神経が刺激され覚醒してしまい、夜眠れなくなっている可能性があります。カフェインを含む飲み物は、一般的には玉露、コーヒー、エナジードリンク、紅茶、ほうじ茶、煎茶、ココア、コーラなどです。とくにコーヒーやエナジードリンクは、カフェイン含有量が多いので、寝つきが悪い方は、午後に飲むのを控えてみても良いかもしれません。
④飲酒はほどほどに
睡眠中、血糖値を一定に保つ役割は肝臓が担っています。多量のアルコールが体内にはいると、肝臓は血糖値維持よりもアルコールの分解を優先して行ってしまい、血糖値の変動により睡眠の質が下がる可能性があります。
4つめプラセンタ注射
プラセンタは肝機能障害、更年期障害、乳汁分泌不全への治療に用いられています。近年では、その美容効果にも注目されています。また、ホルモンバランスや自律神経を調整する働きがあるため、プラセンタ注射が寝つきをよくし熟睡を促す効果が見込めます。海外の研究ではありますが、ブタプラセンタサプリメントが睡眠薬を使用することなく、睡眠の質改善効果を高めるひとつの方法であることも示唆されています。
実際、当院にプラセンタ注射に通ってくださっている患者さんに感想をうかがうと、「寝つきの悪さがよくなった」「途中で目覚めなくなった」「だるさが改善した気がする」「なんとなく体調がいい」といった声をよく聞きます。更年期障害の症状のひとつに睡眠障害がありそれが改善した方、美容目的でプラセンタを開始し睡眠の変化を感じた方、どちらもいらっしゃいます。週1~2回、数か月継続して通院していただくことにはなりますが、生活の改善だけでは難しい方は試してみても良いかもしれません。
当院ではプラセンタ注射1A(1本)1,100円でご用意しています。 ※症状や年齢により、保険適用となる方もいらっしゃいます。
最後に
いかがでしょうか。試せそうなもの、新たな情報はありましたか?まずは、ご自身の生活に無理なく取り入れることができるものを試してみてください。少しでもみなさんの睡眠が改善しますように。
戸越銀座レディースクリニック診療案内
戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。
この産婦人科コラムを書いた人
戸越銀座レディースクリニック 助産師佐藤 友里
経歴
- 日本赤十字秋田看護大学大学院看護学研究科 卒業
- 総合周産期医療センターMFICU勤務
- 産婦人科専門病院・クリニック勤務
資格
- 看護師
- 助産師
- 骨盤ケアリスト認定助産師(日本骨盤ケア助産学会)
- 妊産婦食アドバイザー(一般社団法人母子栄養協会)
メッセージ
当院において、皆さまが快適に妊娠期を過ごしたり、安全でより理想に近い分娩を体験することができるよう、妊婦健診を通してサポートさせていただきたいと思っています。とくに、妊娠中の食事や栄養、分娩経過について、無痛分娩の話題は大好きです。ぜひ、お困りごとや気になることを聞きに来てください!
婦人科の皆さまも、PMSや更年期をはじめとする心身の不調や不安に寄り添い、当院が小さなことでも気軽に相談できる場所になれるよう、丁寧な診療サポートを心がけたいと思っています。
戸越銀座レディースクリニックについて
品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。
〒142-0041
東京都品川区戸越3-1-2 イマーレビル B1F
・アクセス
都営浅草線 戸越駅 徒歩1分
東急池上線 戸越銀座駅 徒歩4分
時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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9:15-13:00 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ★ | ★ |
14:00-17:30 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | × | × |
17:30-19:00 | × | ⚪︎ | × | ⚪︎ | × | × | × |
★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。
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妊娠中の運動
戸越銀座レディースクリニックに勤務する助産師です。
本日は、診察室や保健相談室でよく質問のある、妊娠中にはどのくらい運動をしても良いのか、どのような運動はしない方が良いのかにつ...