月経(生理)移動の方法

月経(生理)移動の方法

 旅行や試験、スポーツの試合などのイベントと月経(生理)が重なってしまうと予定やパフォーマンスに影響することがあります。月経(生理)は医師の指導の下、正しい方法を使用することにより日程を移動したり調整することが可能です。今回は月経(生理)の移動方法に関して説明してまいります。 
 月経移動の方法は大きく、2つに分けられます。長期的に薬を使用してコントロールする方法と1回のみ調整する方法です。

長期的にコントロールする方法経口避妊薬(ピル)による月経移動

 長期的にコントロールする方法では経口避妊薬(低用量ピル)を使用します。通常、ピルは休薬期間(薬を飲まないもしくは偽薬を飲む期間)に月経が来る設計となっています。本来休薬期間を飲むところを、ホルモンを含む実薬のピルを続けて飲むことで生理を遅らせることができます。実薬を長く設けると不正出血となる場合があるため長くても10日間程度にしましょう。
 また実薬を14日間以上内服していれば、早めに休薬期間を設けて月経(生理)早めに来させるということもできます。
 どちらの方法であっても休薬期間2‐3日目より月経(生理)が起こります。
 低用量ピルは喫煙や持病により処方できないケースもあります。医師と相談した上で薬剤の処方を受けるようにしましょう。


今回だけ月経(生理)を1回のみ移動させる方法

 長期的に月経(生理)をコントロールする場合は低用量ピル使用したのに対し、1回のみ月経(生理)を移動させる場合は中用量ピルを使用します。

①生理を早める方法

 イベントがある予定の前に来る月経(生理)から10日間以上飲み始める必要があります。そのため約3週間程度は余裕を持って内服を開始する必要があります。具体的には月経(生理)3-5日目に中用量ピルを10日間以上内服します。内服終了後2‐3日で月経(生理)が来ます。この次の生理は、本来の月経(生理)周期通りの時期(28日周期の方はおよそ28日後)にきます。

生理を早める方法メリット

 月経(生理)を早める方法のメリットは、月経(生理)を避けたいイベントがある期間に薬を内服する必要がない点となります。

生理を早める方法デメリット

 月経(生理)を早めようと思って前回の月経(生理)期間中から内服し、10日間以上内服したのに、内服終了後に月経(生理)が7日以上遅れてくることもあります。そのためこのような場合にはイベントに月経(生理)が重なってしまうリスクがあります。

②生理を遅める方法

 イベントのあとまで月経(生理)を遅らせる場合には、イベントがある予定の前に来る月経(生理)よりさらに前から内服する必要があります。イベントがある予定の前にある予定生理日を起点として、予定整理日の5-7日前より中用量ピルの内服を開始します。中用量ピルをイベントが終了する日まで内服します。内服終了後2‐3日で月経(生理)が来ます。中用量ピルをあまり長期間服用すると途中で不正性器出血となることがあります。最大でも本来の月経(生理)予定日の7〜10日後くらいまでとされています。この次の生理は、本来の月経(生理)周期通りの時期(28日周期の方はおよそ28日後)にきます。

生理を遅める方法メリット

 正しく服用すれば、ほぼ確実に(月経)生理を避けることができます。また、予定が急に決まった場合にも生理予定日の1週間前までに受診していただければ対応することができます。

生理を早める方法デメリット

 イベントがある予定期間中も中用量ピルの内服が必要となるため、薬の副作用が出る可能性があります。

疑問におもうこと副作用

頻度は低いが大事な副作用血栓症

 ピルの副作用の中で最も注意すべき重篤な病気として静脈血栓塞栓症があります。飛行機に長時間乗ることで起こる「エコノミー症候群」で知られている病気となります。静脈血栓塞栓症とは血液を心臓まで血液を送る深部静脈と呼ばれる血管に血栓(血の塊)ができた状態のことです。この血管は主に足にあります。そのため入院中や飛行機の上など長期間同じ体勢をとっている場合に下半身の血液の流れが悪くなり、血栓ができやすくなります。ピルを使用していると、薬に含まれる女性ホルモンのエストロゲン作用で血が固まりやすくなる傾向になります。静脈血栓塞栓症の症状は胸の痛み、呼吸のしづらさ、頭痛、しゃべりづらさ、ふくらはぎの痛みやむくみがあります。また肥満(BMI)・喫煙・高齢女性・静脈血栓塞栓症の家族歴・手術前後の方・産後前後の方も副作用のリスクが重複するためピルの使用は禁忌もしくは医師の慎重な判断のもとで投与が行われます。
 静脈血栓塞栓症はピルの重篤な副作用であるため長い期間に渡り薬を使用する場合は採血を用いた定期的な健康診断を受けることが望ましいです。

最も頻度の高い副作用不正性器出血

 ピルを開始してみたものの途中で中止してしまう副作用で最も頻度が高いのが不正性器出血となります。ピルを使用開始した人の20%が経験するとされています。ただし多くの場合は使用を継続できます。そして使用を継続していると、不正性器出血も次第に減少することがわかっています。不正性器出血の副作用が見られた場合には自己判断で中止せずに一度産婦人科の主治医に相談してみましょう。

2番目に頻度の高い副作用吐き気

 ピルの副作用で見られる頻度として2番目に多いのが吐き気です。低用量ピルにより長期で月経(生理)コントロールする場合は使用を続けることによって1~3ヶ月ほどで次第に症状がおさまることがほとんとです。ピルの内服を就寝前にするなど工夫してみるのも良いでしょう。また低用量ピルには第1世代から第4世代までさまざまな種類があります。種類・商品により含まれる成分も異なるため、ピルの種類を変更することにより使用できる可能性があります。副作用で吐き気がある場合は一度主治医に相談してみましょう。

月経移動受診の際の準備

 月経(生理)移動で来院される際には以下の4点を必ずお聞きして処方を行います。ご確認の上来院ください。

  1. 前回の生理が始まった日
  2. 前々回の生理が始まった日
  3. 次回の生理の開始予定日
  4. 生理をずらしたい予定の日にち(イベントのある日)


まとめ

 月経移動は、医療的に可能な手段ですが、自己判断ではなく、専門家のアドバイスに基づいて行うことが重要です。健康を優先しながら、ライフスタイルに合わせた方法を選ぶよう心がけましょう。

戸越銀座レディースクリニック診療案内

 戸越銀座レディースクリニックでは婦人科診療・妊婦健診を含めた産科診療の他に婦人科検診も行っております。定期的な婦人科検診による早期発見・治療が可能です。
 産婦人科の診察に怖いというイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思います。初めての方でも、女性スタッフによる声かけ・痛みの配慮・軽減・環境づくりに努めますのでぜひお気軽にお越しください。診療は日本産科婦人科学会・産婦人科専門医が行います。産婦人科に関してお悩みのある方は、ぜひご相談ください。

婦人科

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 戸越銀座レディースクリニックは女性の様々な世代において起こりうる身体の変化・お困りごとに対して寄り添い、快適に過ごせるよう最適な診療を提供いたします。
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 各種婦人科検診・ワクチン接種・ピル処方のほか、女性の健康に関連する検査を組み合わせた婦人科ドックをご提供しています。
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この婦人科コラムを書いた人

戸越銀座レディースクリニック 院長・産婦人科専門医里井 映利(さとい えり)

経歴

  • 日本医科大学医学部卒業
  • 日本医科大学付属病院 初期研修
  • 周産期センター・総合病院 産婦人科 後期研修
  • 総合病院 厚生中央病院 産婦人科 産婦人科常勤医師
  • 複数企業にて嘱託産業医

学会・資格

  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医
  • 日本女性医学会 女性ヘルスケア専門医・女性のヘルスケアアドバイザー
  • 日本思春期学会 認定性教育講師
  • 日本生殖医学会会員
  • 日本周産期・新生児医学会 会員
  • 日本女性心身医学会 会員
  • 日本医師会認定産業医

メッセージ

私は主に目黒にある総合病院の産婦人科にて専門分野である女性医学を中心に周産期・婦人科腫瘍と幅広く学び、多くの患者様に接してきました。また私自身も、年齢の変化と共に起きる女性ならではの体の変化・症状に悩んできました。今まで培ってきたものを糧に思春期から更年期以降まで、患者様一人一人に適切な診療を提供できるかかりつけ医を目指していきたいと思います。女性のライフステージの変化に伴う些細なお悩みや変化に寄り添って、より快適な暮らしができるようお手伝いをいたします。地域の皆様にとって気兼ねなく相談できるようなクリニックづくりを目指してまいります。お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

戸越銀座レディースクリニックについて

 品川区戸越・戸越銀座商店街にある戸越銀座レディースクリニックは、産科・婦人科の診療・検診を行っているクリニックです。
クリニックは戸越駅徒歩1分・戸越銀座駅徒歩4分の立地にあります。エレベーターが完備されており、お買い物・お出かけのついでにお越しいただけます。プライバシーにも配慮しながら受付から診察まで女性スタッフ・女性医師が対応、診療を通して患者様が気兼ねなく、快適に過ごせるよう努めてまいります。

〒142-0041
東京都品川区戸越3丁目1−2 地下1階
・アクセス
 都営浅草線 戸越駅徒歩1分
 東急池上線 戸越銀座駅徒歩4分

時間/曜日
9:15-13:00⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
14:00-17:30⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎××
17:30-19:00×⚪︎×⚪︎×××

★ 土・日曜日は8:30-11:30
(受付終了は診療終了時間の30分前)
※日曜日は月2回不定期での診療
※祝祭日は休診となります。


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